ラグビーW杯で大活躍した福岡堅樹さんが今春、順天堂大学医学部に合格した。柔道の朝比奈沙羅さんも独協医大医学部で学んでいる。スポーツ選手と「医学部」の関わりが注目されている。
陸上競技の選手にも医学部関係者が少なくない。しかも受験ワールドでは超難関とされる国立大医学部大の出身者や在籍者が目立つ。2021年6月24日から始まる第105回日本陸上選手権大会に出場する選手もいる。
「記録もしっかり狙いたい」
日本選手権は陸上競技の選手にとって特別の舞台だ。今回は東京五輪最終選考会を兼ねている。過去に一定以上の好記録を出した選手でないと出場できない。
女子三段跳びに出る内山咲良さんは東京大学医学部6年生。今年5月の関東学生対校選手権(関東インカレ)で優勝した。東大女子学生の優勝は、全種目を通じて同大会史上初めての快挙だった。
サンスポによると、東京・筑波大付高時代に走り幅跳びで全国高校総体(インターハイ)に出場、大学でも続けた。思うような結果を残せなかったが、4年生から取り組んできた三段跳びでついに表彰台の中央に立った。昨年の日本選手権は6位。今回の日本選手権では「記録もしっかりと狙っていきたい」と語っている。
同じく女子の800メートルに出る広田有紀さんは20年に秋田大学医学部を卒業。すでに医師免許を取得している。すぐには研修医にならず、五輪出場を目指している。新潟高校時代にはインターハイの800メートルで優勝、大学時代の18年には日本選手権800メートルで4位、19年には5位に入賞している。
今年1月には朝日新聞に登場。コロナ禍の東京五輪について、「様々な方の葛藤が交じり、出場を目指す選手の立場からしても、複雑な心境です。無理をせずに、状況に合わせて冷静に判断していくことが望ましいと感じています」と語っていた。
五輪のメダルも視野に
このほか、男子400メートル障害には、真野悠太郎さんが出場する。2021年春に名古屋大学医学部を卒業。医師国家試験に合格している。愛知県の滝高3年時に出場したインターハイ400メートル障害で3位。19年の日本学生陸上競技個人選手権の400メートル障害で優勝、同年の日本選手権では6位になっている。真野さんも、すぐには医師にならずに五輪出場を目指している。
「競技生活は今年が最後。引退後は歯科医師の道へ」という選手もいる。110メートル障害の金井大旺さんだ。現在はミズノに所属している。今年4月の織田幹雄記念国際大会の男子110メートル障害で13秒16の日本記録を出して優勝した。
朝日新聞によると、北海道函館市にある実家は歯科医院を営んでいる。東京五輪で競技を引退し、医大に進んで歯科医をめざすと以前から公言しているという。
金井さんの日本記録は、2019年ドーハ世界選手権なら銅メダル、16年リオデジャネイロ五輪なら銀メダルに相当する。「日本選手初の五輪の決勝進出が現実味を帯びてきた」と朝日新聞は書いている。決勝進出どころか、メダルも狙えそうな位置にいる。
「いけ!! 理系アスリート」
陸上競技は基本的に個人競技。このため自分のスケジュールに合わせて練習しやすい環境にある。とはいえ医学部の場合は、実習などもあって、日ごろの勉強がとてつもなく大変だ。スポーツとの両立の道は極めてハードルが高い。
同じようなことは程度の差はあれ、理系の学生全般にあてはまる。大学スポーツに特化したデジタルメディア「4years.は」は「いけ!! 理系アスリート」を連載している。
「『文武両道』――言うは易く行うは難しの代表例だろう。特に理系ともなれば、練習時間を確保することさえ、たやすいことではない。この連載では日々奮闘する『理系アスリート』を紹介し、どんな意識で競技に取り組んでいるか、心の内に迫ります」
様々なジャンルの理系アスリートが登場する。理系を目指す高校生アスリートにとっては、大いに励みになり、参考にもなる読み物シリーズだ。
スポーツの世界はプロ化、セミプロ化が進んで日本の五輪代表も近年、実業団選手が多いが、かつては学生が主役だった。1912年に日本が初めて五輪に参加した時の代表選手は、東大と東京高師(のちの東京教育大、現在の筑波大)の2人だった。