東京都のJR山手線などで2021年6月20日に送電トラブルが発生し、複数路線で運転を見合わせた。J-CASTトレンドの取材に応じた「スタジオるんばHP管理人」さんは17時半ごろ、山手線乗車中の目黒駅〜五反田駅間で停電に巻き込まれた。この後、合計で約2時間30分の間、車内に閉じ込められることとなる。
夏場に混雑する電車で立ち往生した時、何が起こるのか。「スタジオるんばHP管理人」さんの体験談と、専門家による対策手段を聞いた。
絶対に車両にトイレを確保して
「スタジオるんばHP管理人」さんが最も不安を感じたのは、トイレだ。今回は乗車前に用便を済ませていたことが幸いしたほか、便意を抑える薬を服用したことにより、問題はなかった。
それでも車内の状況は過酷だ。空調と照明が切れたため、車両の窓を開放したが、人が密集した車内では蒸し暑い状況が続いた。復旧のめどがたたない旨を告げる車内放送が繰り返され、「駅が目の前にあるのに降車の許可が下りずに、開放されないもどかしさを感じ続けました」。
乗客の間では当初、座席の譲り合いもみられたが、後半になると体力が尽きてその場に座り込む人が増えていった。途中で、降車のための手続きを駅で行っているとの車内放送が流れるも、時折、一部の乗客からは「早く(対処を)してくれ」との声も上がったという。最終的には職員の誘導を受けて降車。線路上を徒歩10分ほど歩き、目黒駅にたどり着いた。
今後電車を利用する時には事前にトイレを済ますことや、スマートフォンのバッテリーの確保、飲み物の用意に注意していきたいとのこと。最後に、「非常時には今回のように乗客を閉じ込めるのが前提ならば、絶対に車両にトイレを確保してほしいです」との要望を語った。
小型ポーチに備えておくべきもの
防災・危機管理に詳しい防災システム研究所の山村武彦所長は、このような事態への備えとしてモバイル防災ポーチの用意を推奨する。携帯用のトイレや、モバイルバッテリー、火災時に煙を吸わないための避難フード、懐中電灯、飴とチョコレートなどを準備し、小型のポーチの中に入れておくとよい。
今回のように電車内に閉じ込められた時、個人ができることは限られている。だが、備えがあればある程度過酷な状況をカバーできる。特に首都圏の通勤電車では、トイレの存在しない車両がほとんど。こうした非常用のトイレを持っていると役立つという。
この時期は、脱水症状にも注意が必要だ。熱気を逃がすため、開閉可能な窓は開けた方がいい。ある程度まで服を脱いで涼しい格好になることも有効だ。水分補給も欠かせない。本来、電車といった閉じ込められる危険性のある乗り物に乗る場合には、防災ポーチと共に水も持っておいた方が望ましい。
「とにかく助け合ってほしい」と話す山村氏。乗り合わせた人への思いやりを持って行動することが大事なのだという。混雑していて座りづらい車両では、他の乗客と交代でしゃがんだり、体調不良者・高齢者・乳幼児などについては優先して座席に座らせる配慮も重要だ。
便意や尿意をもよおしたり、熱中症など体調を崩した人が出てきたとしても、車両の外に勝手に出るのは危険だ。付近に走行中の電車や、高圧電線が存在する場合もある。ただ、車両ごとに設けられた非常通報装置を使うと、車掌と通話できる場合がある。トイレに行きたくなったり、体調を崩した人がいた場合には通報し、乗務員による対応を受けるよう勧めた。