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コロナ禍で米国の大学から旧帝大に鞍替え

大学の講師からマンツーマンで英語の授業を受ける小学生
大学の講師からマンツーマンで英語の授業を受ける小学生

   子どもを勉強漬けにしたくないが、「高学歴」も譲れない。そう考える中国人にとって、海外留学はバイパスのような存在だ。そのレールづくりは、子どもが生まれたときから始まる。

   2019年に第1子が生まれた遼寧省瀋陽市在住の高勇さん(40代)は、娘を同市にある全寮制の中高一貫校「東北育才外国語学校」に通わせたいと話す。同校は日本の有名大学への進学に強いことで有名で、公式サイトには「2008年から17年まで在校生1359人のうち682人が日本に留学し、うち246人が世界で上位100位に入っている東京大学、京都大学、大阪大学などに進学しました」とある。高さん夫婦はいずれも大学で日本語を教えており、子どもをバイリンガルにするため、家庭では日本語で会話している。

「国内の北京大や清華大は本人の能力がないとどうにもならないが、海外の有名大学なら情報や金があれば進学しやすい」

   東北地方在住の趙松梅さんの息子は今年、日本の旧帝大に進学した。趙さんは朝鮮族で、家庭内の会話は韓国語。地元の小学校を卒業し、中学・高校は英語で授業を行うインターナショナルスクールで学んだ。本来は米国の大学への進学を視野に入れていたが、コロナ禍や米国との関係悪化を考え、英語で受験できる日本の大学に鞍替えした。「息子には韓国語、中国語、英語、日本語を駆使し、高収入のグローバル企業で活躍してほしい」と願う趙さんだが、2020年から続くコロナ禍で、十数年かけて進めて来た子どもの進学計画が崩れかけたことから、適応障害を発症し昨年秋に数か月間休職した。

   「職場の同僚たちの中で、私の子どもが最初に大学受験を迎えた。絶対結果を出さないとすごいプレッシャーだった」と振り返りながら、「子育てが一段落して、いずれ孫を見たいけど、私たちの背中を見て育った息子が、『子育てはものすごく大変。子どもはいらない』と感じたとしても仕方ない」と苦笑いした。

(文中いずれも仮名)

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37
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