東京や大阪の大規模接種センターで、2021年6月14日から、全国の高齢者を対象とした新型コロナワクチン接種が始まった。東京では1日1万人、大阪では5000人の接種ができる。
しかし、接種対象者を全国に広げても、予約枠の6割以上が余っている。このため、同センターでは新たに自衛隊員や警察、消防、海上保安庁の職員に接種もするという。ワクチン接種をめぐり混乱は、相変わらず続いている。
「接種対象年齢を下げるべき」発言も
ワクチン接種は当初、地方自治体のみで行われる予定だった。ところが接種希望者が殺到、予約が取りにくい状態になり、「ワクチン難民」も発生した。そのため政府は急きょ、東京と大阪に大規模接種センターを設け、ワクチンの予約や接種の機会を増やした。
東京・大手町の大規模接種会場では、5月17日から東京23区内、24日から都内居住者の予約を受け付けてきた。当初は短時間で予約が埋まったが、次第に予約枠に空きが出るようになった。28日から対象者を埼玉、千葉、神奈川に広げ、さらに6月10日からは全国の65歳以上の人の予約を受けつけることにした。
しかし今月27日までの予約枠で、東京・大阪あわせておよそ13万5000人分の空きがある状態に。このため東京では14日から、大阪では17日から警察官らへの接種が行われるという。
せっかく作った大規模接種センターに大量の空きができていることに、政府・自民党も苦慮している。自民党の鴨下一郎ワクチン対策プロジェクトチーム座長は、13日朝のフジテレビの「日曜報道 THE PRIME」に出演し、自衛隊の大規模接種センターについて、現在65歳以上としている接種対象年齢を下げるべきだと語った。
ワクチンを受けるには「接種券(クーポン券)」が必要。大規模接種センターがガラガラでも、64歳以下には基本的にまだ届いておらず利用できないのだ。それでも、東京都江東区では6月15日から16~64歳の区民に接種券送付が始まるなど、徐々に対象者は増えていくとみられる。
地元でも予約できる状態に
大規模接種センターに関しては、これまでも「想定外」のことが起きている。
たとえば、東京・世田谷区では、5月24、25日に大規模接種センターで接種を受けた高齢者区民が1620人いたが、そのうち2割弱にあたる283人が、区の予約をキャンセルしていなかった。これは、区内で先に予約もしたものの、実際の接種は、大規模センターの方が早くできることなどによるとみられる。
しかし、逆に大規模センターの予約が影響を受けたケースも多々ある。立憲民主党の岡本充功衆議院議員は、大規模接種センターを予約していた人のうち、「キャンセルなしで予約当日に来場しなかった予約者は何人だったのか」と質問。政府は、5月24日から31日までの8日間で4081人が予約をキャンセルせずに当日接種を受けに来なかったと答えている。NHKによると、この人数は、予約枠の約4.6%に当たるという。
こうしたトラブルは、双方の予約システムがつながっていないことに起因する。
大規模センターはモデルナ製
大規模センターが不人気になってきたのは、地方自治体での予約や接種が、次第に安定してきたことが大きいとみられている。
厚生労働省が開設しているウェブサイト「コロナワクチンナビ」で、地元の接種場所の空き状況は簡単に確認できる。例えば、このナビで「東京都板橋区」をクリックすると、「予約可能」という医療機関がたちどころに30件近くヒットする。自分の住んでいる場所の近くの医院を探して申し込むことが可能だ。もちろんゼロの区もある。その場合は、少し遠くても、大規模センターの予約をせざるを得ない。
ワクチン予約は先着順。当初は、多くの高齢者が予約に殺到したが、現在のように感染状況が小康状態になると、心理的に急き立てられる感じも薄れる。
大規模センターのワクチンがモデルナ製だ。厚労省のサイトによると、モデルナ社のワクチンは、通常、「4週間の間隔で2回接種します。臨床試験において、本ワクチンの接種で十分な免疫が確認されたのは、2回目を接種してから14日以降」だという。
ファイザー社のワクチンは、「3週間の間隔で2回接種します。最も高い発症予防効果が得られるのは、2回目を接種してから7日程度経って以降です」とある。つまり、地元の医療機関などで打つファイザーワクチンの方が、効き目が表れるのが早い。そのあたりも微妙に影響しているかもしれない。
ちなみにこの記述を読むと、今から警察官らがモデルナのワクチンを打っても、7月末の五輪開幕時に効果は完全ではないようだ。