緊急事態宣言が2021年6月20日まで延長され、エンターテインメント業界は苦況にあえいでいる。ライブハウスという活動拠点を突然奪われ、コロナ禍で新たな活動方法を模索するアーティストの中には、「生の音楽を遠隔セッションで届ける」ことに取り組むグループがあるという。若手アーティストを熱く応援する国内唯一のラジオ番組「DJ Nobby's Tokyo LIVE!!」でメインDJを務める、DJ Nobbyさんの談だ。
DJ Nobbyさんは、21年5月19日に行われた遠隔セッションの配信現場を訪問。普段は見られない舞台裏の様子を取材し、今回J-CASTトレンドに特別寄稿してくれた。
新型コロナウイルス流行初期に一部ライブハウスでクラスターが発生して以来、現在に至るまで多くの音楽演奏の場が奪われている。
ライブハウスという活動拠点に代わる手段を模索する中で、やもとなおこさん、伊藤弘さん、 小川徹さんのアーティスト3人がオンラインサロン「配信研究部」を立ち上げた。21年4月24日に札幌・東京・名古屋・大阪のライブハウスをオンラインで繋いだ「遠隔セッション配信フェス」を開催し、累計5000人を超える視聴者を獲得するなど、大きな反響を得た実績を持つ。試行錯誤の末、「生の音楽を、遠隔セッションを用いて届けるノウハウ」を確立した同部の定期配信現場にお邪魔し、遠隔セッションを間近で見せてもらった。
本番だけではなく「リハーサル」も配信するワケ
「配信研究部」の配信現場にお邪魔してまず驚いたことは、ライブの「リハーサル」に当たる部分、すなわち、接続環境や楽器・ボーカルの音質を演奏者がチェックする場面も、そのまま生配信するところだ。観客だけではなく、同じように苦境に立たされているアーティストたちに向けて、配信研究部のノウハウを伝えることをも目的としているからだという。
遠隔セッションと称するだけあって、参加者は自宅スタジオ、時間貸しのスタジオ、ライブハウスなど、さまざまな場所から参加する。それだけに、それぞれの接続や音響の環境も異なる。
配信研究部の立ち上げメンバー3人は、これまでに自宅の一室を配信用にカスタマイズしてきており、接続環境や音響は万全。カメラや照明にも工夫を凝らし、画作りもこなれている。
3人が相互に接続して会話を始めた時点で、遅延の少なさや音のクリアさ、自然な音かぶりなどが相まって、まるで現実世界で一堂に会しているような錯覚にとらわれた。
音楽の演奏も同様で、オンライン会議などでありがちな遅延や音飛び、音質の劣化などは一切なく、全員がストレスなく演奏できているようだった。
このような中継セッションには莫大な費用とマンパワーが必要で、とてもアーティスト個人が実現できるものではないと思っていたが、配信研究部の3人はこの1年間でそのハードルを越えてきたのだ。