「個人需要」アナリストの答えは
例えばホテルといった施設でテレビを大量に導入すると、NHKとの受信契約が複数発生するため、ランニングコスト(維持費)が大きくなる。半面、客室などにチューナーのないディスプレーを設置し、テレビ放送を受信せずにホテルの案内といった独自のコンテンツを流すようにすれば、NHK受信料の支払いを避けられるため、「BZシリーズ」は選択肢となり得る。道越氏は、こう指摘した。
個人からの需要はどうか。受信料を支払う必要なしというメリットはあまり購買理由にはつながらないと、同氏は推測する。まず、NHKの受信料はそもそも支払っていない人が一定数存在し、こうした人にとっては支払いを避けることを目的としてチューナーのないディスプレーを買う必要がない。
次に、いくつもの受信契約を避けることで多額の維持費を免れ得る法人に比べ、個人が「BZシリーズ」を購入しても、受信料回避による経済的恩恵は大きくない。また、チューナーがないからといって、本体価格が特別安いわけではない。
さらに、通常のテレビからチューナー非搭載機器に切り替えたとしても、受信契約を解約するには様々な手続きを行わなければならず、手間がかかる。こうした経済的メリットの薄さや手続きによるハードルの高さから、個人からの需要はあまりないのではないかと道越氏は述べた。
NHK公式サイトで公開されている「2019年度末受信料の推計世帯支払率」(20年6月23日付)を見ると、世帯ごとの支払率(推計)は全国において、19年度末で81.8%だ。
ただ、ドラマ作品など、これまではテレビ放送で通常見るとされてきたものを、スマートフォンの動画配信サービスで視聴するケースが増えてきた。さらに大画面で見るニーズを満たすため、Android TVのようなOS(基本ソフト)を導入したディスプレーが数年後に市場に出回ってくる可能性はあるという。
これに加え、通常のテレビ受像機と比べて価格が安くなるといったメリットが今後出てくれば、この先「新ブラビア」のようなチューナー非搭載の「テレビ」を選ぶ動きも出てくるのではないかと道越氏。ディスプレー単体でネットを利用でき、パソコンといった外部機器への接続が不要な点も長所として挙げた。