2か月がかりで江戸に到着
ゾウは体長3メートルというから小ぶりだ。それでも富士川渡河では、船を一列に並べて、その上に板を架けて「船橋」を作り、ゾウを歩かせた。人足1900人が動員されたという。
ゾウは2か月がかりで5月27日、ついに江戸に到着する。そして桜田門から江戸城に入り、大広間に召し出され、将軍吉宗のゾウ見物が行われた。
今回のゾウ集団はすでに500キロも歩いていると報じられている。疲れも蓄積しているに違いない。興味深いのは中国メディアの報道ぶりだ。
「雲南野象群500公里『長征』逼近昆明 人象衝突日增」などという見出し。日本人が読んでもおおよその意味がつかめる。「長征」という言葉が使われている。
中国で「長征」といえば、中国共産党軍が、1934年から36年にかけて国民党軍と交戦しながら、1万2500kmを徒歩で続けた大移動のことだ。中国共産党の不屈の歴史の象徴であり、最近も中国の宇宙ロケットは「長征」と名付けられている。
長崎に来たゾウは飼育・調教済みだったが、今回のゾウは野生なので扱いが難しい。農作物などに大きな被害を与えている。しかし、その大胆不敵な長旅を、中国メディアが「長征」と名付けている以上は、中国政府も手荒な処理をしにくいに状況にあると推測される。