雲南省に「野生の王国」
雲南省はベトナム、ラオス、ビルマと国境を接している。東南アジアと地続きで、中国国内ではチベットや、パンダのふるさと四川省と隣り合わせる。
『世界の少数民族』(日経ナショナルジオグラフィック社)によると、中国には56の民族が暮らしているが、雲南省には25もいる。奥地に行けば行くほど、文化人類学の研究対象となっているような珍しい習俗や伝統が残る少数民族の自治州がある。
この雲南省の中のシーサンパンナ・タイ族自治州というところに、自然保護区があり、そこで今回のゾウは暮らしていたようだ。中国当局によると、約300頭のゾウが生息、「野象谷」という地名まである。亜熱帯の自然の中に「野生の王国」が残っている。
この自治州の人口は約100万人。タイ族(ルー族)、ハニ族、ラフ族、プーラン族など東南アジア系の少数民族が全人口の74%を占める。
たとえば ハニ族は母系社会。ハニとは「強く荒々しい女性たち」という意味だという。『世界の少数民族』によれば、若い娘は肌をあらわにした衣装をまとっている。妻は、気に入れば誰とでも自由に性的な関係を持って構わない。「結婚している女性の左の乳房は夫のもの、右の乳房は世界のもの」といわれているそうだ。ちなみにゾウも母系社会だ。
同自治州はメコン川を辿ってタイなどとつながる。中国といってもこの辺りは東南アジアなのだと分かれば、今回のゾウ騒動も理解しやすいかもしれない。