東京都渋谷区の代々木公園では、東京オリンピック・パラリンピック用の「ライブサイト」化へ向けた工事が行われている。工事に先がけて、公園内の樹木の剪定(せんてい)作業が実施されたが、2021年5月下旬にかけては「自然破壊」などとしてインターネット上で批判が続出。作業の中止を求める署名運動も実施された。
一方で、6月1日の読売新聞電子版などの報道によると、代々木公園では五輪期間中のパブリックビューイング(PV)を取りやめ、ワクチンの接種会場として活用するとの発表が小池百合子都知事から行われた。はたして樹木の剪定はどうなるのか。
どれが剪定されたのかよくわからない
剪定の状況を確かめるべく、記者は現地まで足を運んだ。2日の16時ごろの代々木公園では、ライブサイトの設営に向けた工事が行われていた。公園の中央広場は柵によって囲まれ、立ち入りが制限されていた。
広場内では、土の掘り起こしといった作業が行われていた。西門から広場にかけては、作業用のクレーンを積んだトラックが出入りしていた。気になるのは樹木の剪定の状況。都議会議員の龍円あいり氏のブログ(5月27日付)によると、公園内には「一部の枝の剪定のお知らせ」と表示された看板が掲げられていたという。
中央広場を囲む道に沿って公園内を一周したが、ライブサイトに関する工事について告知する看板があるのみで、剪定についての記述は見当たらなかった。また龍円氏のブログに掲載されている剪定位置のマップを参考に木々を注視していったが、どの木が剪定を受けたのかはよくわからなかった。
公園南西部に行くと、ここでは一部の枝が切られたように欠け、樹皮の下の白茶色があらわとなった樹木を確認できた。剪定を受けたものと思われるが、公園側が維持管理のために日常的に行っている剪定なのか、今回のライブサイト設営に伴うものなのかは不明だ。いずれにしろ、根元からわかりやすく「伐採」されているような樹木は見当たらなかった。
剪定作業はすでに終了
東京都オリンピック・パラリンピック準備局のライブサイト担当者に取材すると、剪定作業は5月25日にすでに終えたと話す。中央広場沿いのものなど、全36本の樹木に対し剪定を行った。
剪定は、ライブサイト設営にあたり、作業用の自動車が走行中に枝に引っかかるような事態を防ぐことを目的としたもので、作業動線上にある一部の枝を払ったというものだと説明した。
剪定を行わずに資材搬入などを行なった場合、作業用の車が枝を引っ掛けて樹木が倒れたり、折れた木が来園者にぶつかったりする可能性もあるという。剪定に関して告知していた看板は作業の終了につき、すでに25日に撤去済みだ。
また報道通り、警察や消防関係者に向けたワクチンの接種会場として転用するため、代々木公園のライブサイトでは、五輪期間中(7月23日〜8月8日)のPVは行われないという。
一方でパラリンピック期間中(8月24日〜9月5日)のPVについては未定であり、その時点でのワクチンの接種の進捗具合といった状況によって、引き続き接種会場として活用するか、あるいはライブサイト会場として使用するかを判断する。完全にPVを中止することが決まったわけではないため、ライブサイト設営に向けた工事は予定通り行われているとのことだ。
ライブサイト設営に伴う剪定作業が、新たに実施される予定はない。今後園内で剪定が行われるとすれば、樹木の状態を維持するために通常の公園管理上で行われるものになると担当者は説明した。