新型コロナウイルスのワクチン接種が徐々に進む中、ワクチンが誤って廃棄となる事態が起きている。
兵庫県神戸市では、2021年5月23日に兵庫区役所の集団接種会場で、215回分のワクチンが使用できなくなった。低温で保存すべきワクチンの保冷庫の電源プラグが脱落していたためだ。市は会見を開き、謝罪した。重大なミスだが一方で、ワクチン管理の現場を取材すると、誰もが初めてで多忙を極める状況に苦しい胸の内が垣間見えた。
マニュアルには書かれていない
神戸市の公式サイトによると、5月23日の17時30分頃、薬剤師がワクチンの入った容器「バイアル」を取り出した際には異常はなかった。しかし、その2時間後に市職員がワクチンを保管している薬剤室に入ったときに、保冷庫の電源プラグが抜けていることに気付いた。その時点で保冷庫の温度計は21度を示しており、廃棄になったという。
J-CASTトレンドは、神戸市健康局ワクチン接種対策室を取材した。ワクチンは2~8度を保つ必要がある。保冷庫自体は、温度が高くなるとセンサーが鳴る仕組みだったが、プラグ自体が抜けるリスクにまで気付ける人がいなかったと説明。「あってはならないことで、心が痛かったです」と担当者は話した。
一方で、「行政職員の中でワクチンの管理に慣れた者がいません」。厚生労働省から配布されている手引きなどを読みながら準備を進めているが、今回の電源プラグの脱落は、マニュアルには書かれていない想定外の事態だった。
担当者は、接種を受ける人の命を守ることが第一だと強調する。それを前提に、まず安全にしっかり接種が行えるよう配慮しようと会場でクラスター対策をする、転倒防止にスロープをつくる等、設営の部分には目が行き届く。
ワクチン管理についても重要さはもちろん認識しているが、試行錯誤の部分が多い。
「業務の運用は何事も過去のノウハウの蓄積によって、リスク管理や備えができます。我々も日々一生懸命やっていますが、(ワクチン接種に関する一連の運用は)過去に事例がないので...」
このように、困惑気味だ。