ふたり麻雀 黒川博行さんはメタボを気にしながら、よめはんと遊ぶ

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やらない言い訳

   黒川さんは72歳。直木賞に選ばれた『破門』は60代半ばで、候補6回目にしての受賞だった。下積み時代から作家生活を支えるのが、50年連れ添った「よめはん」だ。

   作家はギャンブル好きで知られ、よめはんも「麻雀は指紋が消えるくらいやった」というツワモノ。出会いの場は雀荘という夫婦にふさわしい日常である。

   お二人のやりとりはあくまで穏やかに、どこか間が抜けたところもあって楽しめる。高血圧という命に関わる問題でさえ、作家の手にかかればボケの素材でしかない。

   それにしても、「ほんまに痩せんといかん」という反省はどこまで本気なのか。

   ダイエットや健康管理については、数えきれない失敗を含め、私も経験豊富な部類である。昨年も、速歩と節酒のみで15キロ落としたばかり。血圧も肝機能もたちまち正常値に戻ったから、人間の身体は正直だ。

   成功の前提条件は、とにかく「始めること」、そして「習慣=生活の一部にすること」だ。自由時間が限られる現役世代にはハードルが高いが、作家のような自由業なら、すべては本人の意思にかかってくる。

   黒川さんの場合、やらない言い訳に自分のキャラクターやらアイデンティティーを持ち出すところが、もう十分に怪しい。このままでいいや、という確信犯と見た。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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