新型コロナワクチンの接種は予約が大変だということが報じられている。どれほど大変なのか。J-CASTトレンドは体験者から話を聞くことができた。インターネットに慣れていても予約は難しいのだという。
予約可能日が次々に消えていく
東京・板橋区では2021年5月24日朝9時から、区内の65~74歳を対象にした予約がスタートした。
予約方法は大別して二つある。一つは最寄りの医療機関に個別に、直接電話して予約を取る方法。もうひとつは、区が設けたコールセンターに電話をするか、インターネットで予約する方法だ。こちらは、区が設営した区内5か所の集団接種会場での接種を希望する場合に限られる。
区内に住むAさん(71)は、近所に集団接種場があることが分かっていたので後者を選んだ。電話は混雑するだろうと考え、ネット予約と決めていた。ネットは20年以上前から使っており、慣れている。
あらかじめ予約サイトのURLにアクセスし、パスワードなども入れて準備は完了していた。希望の接種場も再確認し、事前に可能なところまで、試し打ちもしていた。
そして午前9時ちょうどに、予約サイトにアクセスした。サイト内を順番にクリックし、希望の会場を選ぶ。「予約の空きがある日付は、カレンダーに緑色で表示されます」という表示が出た。
5月は早くも埋まっていた。次のページをクリックすると、6月のカレンダーが表示された。こちらもすでに何日かが埋まっている。しかしまだ「緑色」の日付が大半だ。その中の最初の方の日付をクリックする。「希望時間帯」が表示され、そこから時間帯を選ぶようになっている。
ところが、である。日付は緑色だったのに、時間帯は全部埋まっている。どうも、時間帯が全部埋まっても、直ちに日付の緑色が消えるわけではないようだ。よし、別の日をクリックしようと思い、元のカレンダー画面に戻った時に見たのは、驚くべき光景だった。まるでカレンダー全体が津波に襲われたかのように、次から次へと緑色が消えていく。そして、あっという間に緑色がゼロになった。
Aさんによれば、ほんの20~30秒間ほどの出来事だった。「ネット予約に完敗しました」。事前に予行演習をしていたにもかかわらず・・・。
後でもう一度、サイトを見たら「本日予約開始のWEB予約のワクチン接種【集団接種会場】は満員になりました」という断り書きが、9時18分に出ていた。
電話がつながった!だが予想外の展開
これはマズイと思ったAさんは、最寄りの医療機関への電話に切り替える。その結果は言うまでもないだろう。何度かけても「話し中」。もしくは、「ただいま電話が込み合っております。しばらくたってからおかけ直しください」。
何か所目かの医院で偶然電話がつながった。ちょっと自分でもびっくりしたという。受付の女性から、「一度、こちらまでお越しいただき、登録を済ませてください」と言われた。そう遠くないところにある医院なので、大慌てで自転車でかけつける。
待合室には、同じような先客もいたが、混んではいない。登録用の紙を渡される。名前と年齢、携帯電話の番号などを書いて受付に戻した。「接種日時が決まったらこちらから携帯に電話します」。
医院に行けば、即座に接種日が決まると期待していたら、そうではなかった。電話はいつごろになりそうですか、と聞いたら、わからないという。6月になるか、7月になるかも不明だった。
「ほかのところで先に予約が決まったら、こちらをキャンセルしていただいて結構です」。受付の女性が淡々と説明する。
もはやこれ以上、駆けずり回っても結果は同じだろう。気長に、医院から電話がかかってくるのを待つしかない。それ以上の予約努力はあきらめたという。
転売屋もいないのに
今回の体験の教訓をAさんに聞いた。一つは、この予約システムが、ローテクだということ。ネット予約とか言っているが、当日午前9時スタートという「先着順」。それも一瞬で「受付終了」になる。
「アイドルのチケットも、入手が大変だと聞きますが、あれは転売屋が買い占めるからでしょう。ワクチン接種は転売屋もいないのに、こんな状態です。日本のローテクぶりを痛感しました」
ワクチン接種予約システムの構築は、確かにどの国も苦労しているようだ。しかし、日本がドタバタなのは否めない。政府による「大規模接種センター」の予約システムでさえ欠陥が報じられている。
これからさらに多くの国民への接種が始まる。対象者の大半がネットに慣れた人になるだけに、ネット予約がさらに大変になるだろうということは覚悟しておいた方がよさそうだ。