柔道の元世界女王で、日本オリンピック委員会(JOC)の理事でもある山口香さんが、今夏に開催が迫っている東京五輪について「意義はない」と厳しい意見を表明し、注目されている。
東京五輪をめぐってはマラソンのメダリスト、有森裕子さんが聖火リレー関連イベントへの参加を辞退したばかり。山口さんは現職のJOC委員でもあり、波紋を広げそうだ。
やめることすらできない状況
この発言は2021年5月19日、共同通信のインタビューに答えたもの。山口さんは、「国民の多くが疑義を感じているのに、国際オリンピック委員会も日本政府も大会組織委も声を聞く気がない。平和構築の基本は対話であり、それを拒否する五輪に意義はない」と語っている。共同通信が開催可否の判断について聞いたところ、「もう時機を逸した。やめることすらできない状況に追い込まれている」と憂慮したという。
この発言がヤフーニュースで報じられると、短時間のうちに、「まさしく、開催に意義を感じられる状況ではない」「自身の考えをしっかり発言しているのは立派だと思う」「大会組織関係の多くが聞く耳を持たないというのは大変残念なことだ」「五輪関係者でまともな意見を言うのは山口氏くらいだ」などと大量の賛同コメントが寄せられた。
立憲民主党の蓮舫参院議員も、「JOC理事の重い発言です。JOC、組織委員会の反応があるのでしょうか」とツイートしている。
山口さんは、13歳の時に全日本体重別選手権で優勝して以来10連覇。「女三四郎」とも呼ばれ、1984年の世界選手権で日本女子として初制覇した。88年ソウル五輪で銅メダル獲得。日本女子柔道界のレジェンドで、現在は筑波大学の体育系教授。
森喜朗発言も批判
山口さんは、早くから世界の舞台で活躍し、現役引退後は指導者として経験を積んできた。さらに現在は大学教員で日本学術会議会員。教育者・研究者・学者でもある。これまでもジェンダーを踏まえた国際的視野に立った発言でしばしば注目されてきた。
今年2月、森喜朗氏が女性蔑視とも受け取れる発言をしたときは、「日本はまだ男女平等が進んでいないと世界に発信してしまった」と残念がり、「スポーツや組織の会議では男女のバランスが必要」と指摘していた。
有力スポーツ関係者の東京五輪対応では5月17日、元マラソン銀メダリストの有森裕子さんが聖火リレーの代替イベントへの参加辞退が報じられたばかり。
山口さんはその有森さんと、「文藝春秋」4月号の「改めて開催の意義を問う『東京五輪、国民は望むのか』」というテーマで対談。政府や大会組織委員会が五輪開催強行に突き進む現状の問題点を語り合っていた。