その時、J太は涙を浮かべた
1つめは「キャストレフ」。2枚の迷路が重なったパズルだ。両プレートの溝の中には、互いの突起が食い込む。一際穴の大きい「ゴール」まで安直に迷路を進めようとすると、もう片方の突起が溝の壁面に引っかかる。
開始1時間後。
J太「ここまで難しいと、企画倒れになるなあ」
ひとり目に涙を浮かべつつ、編集長が「原稿書けないとは何事ダァーッ」と烈火のごとく怒る姿を思い描いた。レベルが少し上がるだけで、ここまでハードになるとは。迷路が進まない。
気分を変えるため、テレビでプロ野球中継をつけた試合を流し見しながらいじってみる。引っかかっているところで片方の迷路の角度を変えてみると、「おっ?」。手元の感覚に変化が起きた。
そのまま、片方の突起がゴール。これはいけるかもしれないぞ!勢いがついたように続け、ようやく両方の突起が同時にするっと外れてくれた。ここまで1時間29分11秒。
ただ細かい手順を忘れ、戻すのに1時間51分13秒も要した。合計で3時間20分24秒。野球の試合は、とっくに終わっている時間だ。
「外せますか?」に並んで「戻せますか?」も「はずる」のテーマだが、戻す方にもこんなに苦労させられるとは。
次は、流線形の「キャストバロック」。ボディーをひねっていくと、互いのくっつき方が変わっていく。「こうか。いや、こっちか」。繰り返して行くと、1時間24分30秒で外れた。戻す時には10分11秒で、合計タイムは1時間24分41秒。野球の試合なら、7回の攻防あたりか。「キャストレフ」よりは簡単だった。
しらふで2つ解いた。よし、アルコールタイムだ。
アルコール度数9%、500ミリリットルのチューハイ缶を、ゴクゴク飲む。う、うまい!謎解きの疲れと、同じような作業で刺激を求めていた脳に、数日ぶりのアルコール。キンキンに冷えた炭酸が喉元を通ったかと思えば、胃袋がカーッと熱くなり、世界が少し楽しくなる。
しかし、「まだ酔いが足りないかも...」。「予備燃料」として用意していた350ミリリットル缶も飲んだ。あくまでも、きちんと酔った状態で検証するためだ。目的は忘れていない。これで準備はバッチリだ。