材料科学のこれから
磁石やシリコンは、記憶装置や演算・制御装置を通じてコンピュータの基盤になっている。コンピュータの進化は、こうした装置の製造・加工技術の高度化によりもたらされたといってもよいのではないだろうか。現在の情報通信技術を踏まえてどのようなデジタル社会を築いていくかといった議論をするときも、その基礎には様々な装置があり、さらにそれらの元となる材料があることを思い出しておきたい。「画期的な材料が出現すれば、その上に構築されるテクノロジーも全く別次元へと進化してしまう」ということになる。
材料研究の分野では日本は大きな存在感を発揮してきたが、かげりが見えてきているという。新しい材料をコンセプトから製品化につなげるには試行錯誤を繰り返しながらの性能や製造法の改善が必要で、資金力とマンパワーのあるところが優位となる。日本が強みとしている新しいコンセプトをつくる部分でも、ビッグデータの高速解析と深層学習が威力を発揮し始めている。
筆者は、現在は「きちんとした理論的背景のもと、原子レベルで設計することによって、新たな機能を持たせた材料を合成する時代に入った」という。材料のことを知る楽しさに加えて、これからどのような(夢の)材料が登場してくるか(そしてそれは誰がどのような形で見つけるあるいは創ることになるのか)、その材料は人々の暮らしや世界の構造をどのように変えるか、そして、(材料科学の分野に限らないが、)日本の競争力をどのように確保していけるか、改めて、そういったことを考えさせられる。
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