まだ承認はファイザーのみ
二つ目に指摘されているのは、「承認」の遅れだ。英米独などのワクチンはそれぞれの国などで臨床試験が行われ、安全性が確認されたとして自国民向けに使用が始まった。ところが、ワクチンは有効と確認されたら、すぐにどの国でも使用できるというものではない。国情や人種などが違うので、日本でも改めて臨床試験などの手続き行われ、厚生労働省が安全だと認めて初めて使用できるようになる。そうした作業のため、新たに多少の時間が必要になる。
日本では2月14日になって、ファイザーとビオンテックのワクチンが特例承認され、医療従事者への接種が始まった。アストラゼネカとモデルナのワクチンのワクチンは、5月20日ごろ承認される見込みだという。
イスラエルが早々にワクチンの大量接種に成功したことはよく知られている。「フォーブス」によると、イスラエルは、ファイザー製ワクチンの有効性を確かめる大規模な「試験場」になった。政府はその実地データの提供と引き換えに、ファイザーから早い段階でワクチンを大量に確保したのだという。ハイテク先進国で「知立国家」「もう一つのシリコンバレー」ともいわれるイスラエル。米国や米先端産業と特殊な関係にある「政治力」も見せつけた。
今やワクチンは「国力」のモノサシにもなり、「戦略物資」「外交手段」の様相も強めている。すでに、中国のワクチンは途上国向けに輸出されている。