インド帰国者を「強制隔離」できない 新型コロナ「陰性後は自宅待機」の根拠

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   インドやネパールからの帰国者で、空港検疫により新型コロナウイルス感染者が続々と判明している。厚生労働省の5月6日の発表では、新型コロナ患者2人、無症状病原体保有者27人が報告され、うち7人がインド、19人がネパールからだった。

   インドからの全入国者および帰国者については、5月1日から「検疫所長の指定する場所で待機」「入国後3日目に改めて検査」「陰性と判断されたら、入国後14日間の残りの期間を自宅待機」という体制。海外には、入国者全員を「14日間強制隔離」する地域もあるが――。

  • インド帰国者を全員「隔離」するのが難しい事情は
    インド帰国者を全員「隔離」するのが難しい事情は
  • インド帰国者を全員「隔離」するのが難しい事情は

「入国後14日間の強制隔離」措置の国は幾つも

   5月6日から7日にかけ、「政府がインドからの入国者に対する水際対策を強化する見込み」と、複数の報道があった。NHK WEBの5月7日付記事によると、具体的には「国が確保する宿泊施設にとどめる期間を入国後6日間にした上で、3日間に1回、ウイルス検査を行うことを求め、陰性の場合のみ、自宅などでの待機に移ることができる」。インドだけでなくパキスタンとネパールからの帰国者も対象で、5月10日から運用する方向で調整しているという。

   施設滞在期間が入国後「3日間」から「6日間」に延長されることになる。ただその後は「PCR検査の結果、陰性だった場合は自宅待機」措置であることに変わりはない。

   海外には「入国後14日間の強制隔離」を取り決めている国は複数ある。外務省の公式サイトを見ると、オーストラリアは「全渡航者に対して、指定された施設における14日間の強制的な自己隔離を義務付ける」、米グアムは「原則として、入国する全ての者に対して、グアム政府指定施設での14日間の強制隔離」としている。

   なぜ日本は、PCR検査結果を問わず「入国後14日間の強制隔離」措置が取れないのか。理由は「検疫法」にある。国内に常在しない感染症の病原体が、国内に侵入することを防ぐため海外から来航する船舶、航空機を対象に行われる検疫措置について規定した法律だ。

陽性者でないと「隔離」はできない

   ニッセイ基礎研究所の常務取締役 保険研究部研究理事兼ヘルスケアリサーチセンター長・松澤登氏はJ-CASTトレンドの取材に、法律上は陽性者(新型コロナウイルス患者)でないと「隔離」はできないと話す。

   新型コロナウイルス患者および、感染が疑われている人は検疫法第十四条に基づき、以下の全てもしくは一部を適用する。

・隔離
指定医療機関(特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関)に入院を委託。緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医療機関以外の病院または診療所など、検疫所長が適当と認めるものにその入院を委託。

・停留
期間を定めて、指定医療機関(特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関)に入院を委託。または、これら以外の検疫所長が適当と認める病院・診療所に入院を委託。もしくは宿泊施設内、船舶内に収容。

・感染を防止するための報告または協力
感染者に対しては病原体を保有していないことが確認されるまでの間、当該者の体温その他の健康状態について報告を求め、または宿泊施設から外出しないことその他の当該感染症の感染の防止に必要な協力を求める。感染のおそれがある者に対しては潜伏期間を考慮した期間内に自宅等から外出しないよう求める。

   インドからの入国者で言うと、「入国後、6日間施設で待機」が「停留」、陰性と判断された後の待機が「感染防止協力」にあたる。つまり「感染が疑わしい人」は停留か感染防止協力のみ。海外では陽性・陰性問わず「入国者を2週間強制隔離」とする例もあるが、日本だと現行の法律の事情で同様にすることが難しいのだ。

   また、松澤氏は隔離措置を増やすと「手間がかかること」、「キャパシティが足りない」といった問題もあると考えられるとも指摘している。

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