「チフスのメアリー」を連想
インターネットでこのニュースが報じられると、さっそく「チフスのメアリー」を連想する指摘があった。「メアリー」は感染症の世界では有名人。いわゆる「サイレント」の「スーパー・スプレッダー」だ。
科学史研究者の金森修さんの著書『病魔という悪の物語――チフスのメアリー』(ちくまプリマー新書)によると、1906年、ある銀行家の一家から6人の腸チフス患者が出た。衛生工学の専門家が調査を依頼され、出入りしていた業者らも調べる。
事件後にやめた賄い婦が浮上した。それがメアリーだ。ニューヨーク周辺で賄い婦として働いていたメアリーは、10年ほどの間に8つの家に雇われていた。調査の結果、そのうち7家族からチフス患者が発生、感染者数は合計22人、うち1人が死亡していたことがわかった。
メアリーの便を検査したところ、彼女が保菌者で、感染を広げていた可能性が高いことが突き止められた。本人は全くの無症状。しかし、その後の人生の大半を隔離施設で過ごすことを強いられた。