インドで新型コロナウイルスの急拡大が止まらない。2021年4月に入り、感染者が1日で 30 万人を超える日が続くなど危機的な状況だ。「変異型」の影響に加えて、直前の3月に大規模な宗教行事があり、多数の人々が集まったのも一因と見られている。
実は 19世紀に猛威を振るったコレラも、インドの宗教行事と密接な関連があったとされている。
大祭の時期にコレラ拡散の可能性
インドの風土病だったコレラは、19世紀に入って何度も、欧州の大都市、とりわけインドとのつながりが深い大英帝国の首都ロンドンを揺るがした。世界的なパンデミックも数回あり、多数の人が亡くなった。
ではなぜコレラは 19 世紀になって突然、世界各地に出現したのか。『コレラの世界史』(新装版、晶文社)によると、いくつかの説がある。その一つが「宗教行事」関連説だ。
1817 年の最初の大流行以前から、インドのガンジス川流域では時折コレラが発生していた。ヒンズー教の聖地が点在するエリアだ。
6年目ごとの例祭や、12 年目ごとの大祭の時期に運悪くコレラ菌の活動が活発化すると、被害が広がりやすい。とりわけ 1817年のコレラは、古老の記憶では前例がないほど毒性の強いものだった。この時、新型の強力なコレラ菌が出現した可能性があるという。
英国は当時のインドに深く介入し、政治経済的に支配を強めていた。やがて植民地化する。インドの限定された地域の風土病だったコレラが、英国に「流出」し、世界に広がる構図が出来ていた。