牝馬が苦戦し続けてきた歴史
カスヨ わたしは押え△よ。最初言ったように長距離戦は牝馬に酷なのよね、残念だけど。春の天皇賞が始まったのは1938(昭和13)年よ。80年以上もある歴史の中で春で3着以内に入った牝馬は全部で5頭しかいないわ。優勝は1頭だけ。レダという牝馬で1953年(昭和28年)。最後に3着に入ったのは1955年だから、もう60年以上も前のことよ。ここ数年、たしかに牝馬は強くなったんだけど、この長距離戦はどうかしらね。今回3頭の牝馬が出てるんだけど、カレンブーケドールは対応能力が高く、どんな相手、どんな距離でも相手なりに走るため、上位に来る確率が高いと思うわ。でも勝ち切るまではどうかしらね。
ガジュマル爺 わしは3番手じゃ。2年前のジャパンカップ(GI、東京、2400メートル)で2着。昨年のJCではアーモンドアイを追って、最後は無敗の3冠馬2頭に抜かれはしたが僅差の4着と好走じゃ。前走の日経賞(GII、中山、2500メートル)では4コーナー6番手からワールドプレミアと同じ最速の上がり3ハロン(最後の600メートル)34秒5の2着と、しぶとさをみせたんじゃ。2年前のオークス以降はすべて重賞レースを使って、その連対率(2着以内)が64%という堅実さは、このメンバーの中では光っておる。今回は内枠3番枠から発走し、中団より前でレースを運ぶことができれば、戴冠も射程距離にあるじゃろ。
カス丸 すんなりとはいきそうもないきゃすう。ともかく今回は混戦。勝ちそうな馬は他にもいるじぇい。どれが強そうきゃすう?
カスヨ 最初に言ったように今年の天皇賞は、いつにも増して先行しないと勝てないわね。その点からいうと、わたしの一押しはディアスティマになるわね。前走の松籟ステークス(3勝クラス、阪神、3200メートル)は今回と同コース、同距離よ。逃げに逃げて最後は3馬身差の圧勝だったわ。走破タイム3分14秒9は京都と阪神の違いはあるけれど、十分通用するタイムだわ。去年のフィエールマンが勝った時は16秒台だったからね。 次はナムラドノヴァンね。この馬は、今年の万葉ステークスを勝利した後は成績が安定しているのよね。今年、3000メートル以上のレースを3回使って、3回とも掲示板を外さないという安定ぶりだから、ステイヤーとしての適性は高いわね。スタミナ勝負になれば一発があってもおかしくないはずよ。 で、もう一頭は、やっぱりアリストテレスなのよね。この馬は前走の阪神大賞典で惨敗したから、一気に人気が落ちてしまっているんだけど、冷静に考えれば底力はナンバーワンのはずなのよ。去年の菊花賞(GI、京都、3000メートル)でコントレイルにあわや勝つんじゃないかというところまで迫ったわけだから。だから前走勝っていたら圧倒的な1番人気のはずよ。でも不思議なのよね。なぜあんなに伸びなかったのかしらね。たしかにレース中の映像を見ると、前半行きたがっているのをルメールちゃん(クリストフ・ルメール騎手)が一生懸命なだめていたわね。入れ込みがひどくて最後はスタミナが残ってなかったのかしらね。ただ、道悪だったからというのは違うと思うのよね。というのは2走前に重馬場どころか不良馬場でちゃんと勝っているんだからね。前走のパドックでは入れこみが見えなかったんだけど、今回は注意してみないといけないわね。落ち着いていれば圧勝してもおかしくないからね。
ガジュマル爺 わしは先ず牝馬のウインマリリンじゃ。前走、牡馬との混合戦だった日経賞(GII、中山2500メートル)を4コーナー2番手から抜け出し、2着のカレンブーケドール、3着のワールドプレミアといったGI常連馬を退けたのが光っておる。昨年のオークス(GI、東京2400メートル)で人気薄ながら、無敗3冠牝馬デアリングタクトの2着。ぶっつけで臨んだ秋華賞(GI、京都2000メートル)は案外じゃったが、古馬牝馬とのエリザベス女王杯(GI、京都2200メートル)では荒れた内枠沿いを走り、外から来たラッキーライラックの4着に踏ん張った。この馬はオークスの時もそうじゃったが、内ラチ沿いを先行できる脚が魅力なんじゃ。外枠に入ったが、皐月賞(GI、中山2000メートル)でGIジョッキーの仲間入りを果たした横山武史騎手がうまく導けば一発があってもおかしくないじゃろ。 次にユーキャンスマイルじゃな。2018年の菊花賞で3着。その後、3000メートルの万葉ステークス(2019年。オープン、京都)で2着、次のダイヤモンドステークス(GIII、東京3200メートル)で初重賞制覇を遂げると天皇賞(春)では3番人気に押されてフィエールマンの5着に頑張ったんじゃ。昨年の天皇賞(春)は前哨戦の阪神大賞典(GII、3000メートル)を制した勢いで臨んだが、再びフィエールマンの4着と一歩及ばなかったんじゃ。中長距離のGIレースの常連だが、もうワンパンチほしいところなんじゃな。今年初戦の阪神大賞典は上がり最速(36秒8)で2着に追い込み、6歳となっても元気なところを見せたから今回はチャンスかもしれん。 最後は今回少ないGI馬の一頭、マカヒキじゃ。2016年の日本ダービー馬も、もう8歳じゃ。すっかり輝きが薄れてしもうたが、昨年は春に1戦(大阪杯、GI、阪神2000メートル)、秋1戦(ジャパンカップ、GI、東京2400メートル)の2戦だけ。使われてきたレースは3歳時の弥生賞(GII、中山2000メートル)以降すべてGIIとGIで大事に使われておる。そんなキャリアを持ちながら、なんと天皇賞(春)への出走は初めてじゃ。鞍上は藤岡康太騎手。人気薄の実力馬。ゆったり流れる長距離レースで新たな一面を見せるかもしれん。
カス丸 うーむ、混戦きゃすう。ここは底力のある馬を選ぶじぇい。巻き返しを狙うアリストテレスが本命◎きゃすう。