町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』 「本屋大賞」受賞で早くも40万部突破

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   2021年の本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ著)が早くも40万部を突破、好調な売れ行きを見せている。出版元の中央公論新社は重版を決定、本屋大賞発表当日の貴重な舞台裏を記録したメモリアル動画も公開し、さらなる売り上げ増をめざして力を入れている。

  • 『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ著)
    『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ著)
  • 『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ著)

「孤独」「虐待」「生きづらさ」

   「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラのこと。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。

   そんなクジラと重ねあわされるのが、自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年だ。彼らが、新たな魂の物語を紡ぎだす。

   「虐待を受け、いまも心に傷が残る女性が主人公。生きづらさを抱える人びとの、声なき声を描いた」(朝日新聞)作品だ。

   町田さんは1980年福岡県生まれ。北九州市立高等理容美容学校を卒業後、理容院や菓子店などに勤めていたという。今も福岡県の田舎で暮らしている。2016年、「カメルーンの青い魚」で新潮社が主催する第15回女による女のためのR-18文学賞の大賞を受賞。17年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(新潮社)で作家デビューした。本書は初の長編作品だ。

全国各地の書店ランキング1位

   昨春、初版6000部で発売されたが、書店員からの熱い応援に支えられ、「読書メーター OF THE YEAR2020」や王様のブランチ(TBS系)「BOOK大賞2020」などを受賞して年末までに10刷。全国紙でも著者インタビューが掲載されるなど注目され、21年4月14日、「本屋大賞」が決まった。

   その後、売れ行きにいちだんと拍車がかかり、4月26日付「オリコン週間BOOKランキング」をはじめ全国各地の書店ランキング1位に。5月11日の重版で、累計発行部数が41万部となる。

   「本屋大賞」は2004年に設立された。NPO法人・本屋大賞実行委員会が運営する文学賞。実際に新刊本を扱う全国の書店員たちの意向が反映されるということで、出版業界では最も影響力のある賞とされる。

   第一回受賞作は、『博士の愛した数式』(小川洋子著)。その後も、『告白』(湊かなえ著)、『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉著)、『舟を編む』(三浦しをん著)、『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)、『かがみの孤城』(辻村深月著)、『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ著)などベストセラーが目白押し。20年は『流浪の月』(凪良ゆう)が受賞した。

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