見開きの独占秘話
連載の「未発表回」が、どのような経緯で編集部にストックされていたのかはわからない。欄外に「取材・文」として女性名のクレジットが添えられており、聞き書きなのかもしれない。いずれにせよ、他誌に先んじられる心配のない「肉声」である。
週刊女性はこのエッセイの前2ページを割いて、見開きで「幻の"渡鬼"次回作はコロナ禍がテーマも...『もう書かない』と決めた最晩年の悟り」と題する「哀悼秘話」を載せている。「編集部だけが知る"最後の日常"とは...」と。
そこで担当編集者は「最後にお電話したのは2月半ばでした。『体調が悪くて。脳の検査があるから。また来週に連絡をください』 そうおっしゃっていました」と語っている。それが最後の会話になったそうだ。
2月下旬に体調を崩し、都内で入院。3月には熱海の病院に移り、4月3日に自宅に戻った翌日、帰らぬ人に。ほぼ望み通りの最期となった。
〈あれだけの仕事をやり遂げ、九十五歳まで書き続け、現役のまま、すうーっとあちら側に行く。なんと羨ましい終わり方であろうか〉
林真理子さんは、週刊文春(4月22日号)の連載でそう称えた。
人生の終章で「何も起きない日々」を抱きしめるには、長い準備が要るようだ。
冨永 格