声を上げなかった人が動いた
国の主張は、「法の下の平等」に反するのか、それとも原告の事業自体が「社会一般の道徳観念」から逸脱するのか。
あるいは、こうした理念論争とは別に、現状を緊急事態と認識し、新型コロナという特異な感染症の拡大防止のため、特例として「風俗産業」にも給付金を支給する方がよかったのか。
読売新聞が「独自ニュース」として、「歌舞伎町で十数人感染」とクラスターを報じたのは2020年4月1日のこと。あれから1年が過ぎ、3度目の緊急事態宣言も出る中で、「夜の街」「性風俗」をめぐる問題は未解決のままだ。
ちなみに「夜の街」に関しては、昨年6月刊行の『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)もある。主として、最初の緊急事態宣言下の歌舞伎町をルポしたものだ。著者の中村淳彦さんはノンフィクションライター。貧困や風俗などの社会問題をフィールドに取材を続けていることで知られる。
対して、坂爪さんは実際の支援活動に長年携わっており、業界の内側に詳しい。孤立と貧困に苦しむ女性たちを助けるために、これまで声を上げなかった人たちが声を上げ、動いていたということも、『性風俗サバイバル』では報告している。