多民族の巨大イスラム国家はどのように繁栄したのか

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■『オスマン帝国英傑列伝-600年の歴史を支えたスルタン、芸術家、そして女性たち』(著 小笠原弘幸、幻冬舎新書)

   オスマン帝国はどのように誕生し、600年に渡りなぜ広大な領土を統治できたのか。その軍事力の強みの背景には何があり、多民族の集団がイスラム教の下でどのように繁栄したのか。

10人の男女を通し帝国の盛衰を描く

   13世紀末のアナトリア(小アジア)は、衰亡期にあったとはいえ東ローマ帝国と海峡をはさみ、東にはペルシャ、セルジュークトルコの影響を受けた地域の小集団がいた。そこから生まれたオスマン朝は、やがて周辺諸国を飲み込み、ヨーロッパ諸国が恐れるほどの強国と発展する。最大版図は東ヨーロッパ、中近東、北アフリカにも及んだ。

   オスマン帝国は、キリスト教徒との親和性を尊重し、18世紀以降はヨーロッパの科学技術や芸術を取り入れることにも政策的に取り組んでいた。しかし、ヨーロッパの科学技術の進歩に立ち遅れ、第一次世界大戦後は中国の清王朝の末期のように没落し、共和国へと変身を遂げる。

   本書では、オスマン帝国の初代スルタンから、トルコ共和国の初代大統領アタテュルクまで、芸術家3人、王妃2人を含めて10人の男女の横顔を描くことによって、オスマン帝国の盛衰をわかり易く語ってくれる。著者は、トルコの中東工科大学に留学中、現地の最新の文献を渉猟して本書を執筆した。力作である。

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