友人が「ドイツの楽譜」を貸してくれた
「神童」でなかったロッシーニが、どうしてそんなに急激に才能を開花させたのでしょうか?もちろん、もともと才能があり、きっかけが無かっただけ・・とも言えますが、現代でも早期教育が必要とされるクラシック音楽の奥義を、文字通り「短期集中」で会得することが可能なのでしょうか?
そのヒントは、パリで引退した68歳のロッシーニが、ジャーナリスト、E.ミショット立ち会いのもと、30代のワーグナーと対談した中にありました。
ロッシーニは、「私は、感受性が鋭く、筆も早かったのですが、音楽の基本的な教育が欠けていました・・」と自分自身で認めているのです。しかし、そんな彼がボローニャ滞在中、もっとも役にたった勉強は、友人が、「ドイツの楽譜たち」を貸してくれたことだ、と断言しているのです。
「ドイツ」といっても国のことではなく、広くドイツ語圏・・のことです。彼自身は、外国から楽譜を取り寄せる知恵も財力もなかったのですが、「音楽上の友人」が快くハイドンやモーツァルトのオラトリオやオペラのスコア(総譜)を貸してくれたのです。