「ロダンのココロ」シリーズで知られるマンガ家の内田かずひろさん(56)が最近、仕事が減って困窮しているという話が報じられている。一時はホームレス生活に陥っていたというから尋常ではない。友人らが救いの手を差し伸べている。
公園で寝袋に潜り込む
内田さんは1990年に『シロと歩けば』でデビュー。90年代後半には朝日新聞で犬のロダンを主人公にしたほのぼの漫画「ロダンのココロ」を連載して人気を博し、『ロダンのココロ』(1~5)を朝日新聞出版から刊行。ほかにも、何冊もの単行本や絵本作品、イラスト作品などがある。根強いファンを持つ漫画家の一人だ。
ところが、そんな内田さんの窮状を伝えたのが2021年2月20日の東京新聞。 ここ数年は仕事が減り、昨年末、住んでいた都内のアパートが取り壊しになることで退去を求められた。その後は知人を頼って寝泊まり。アパートを新たに借りる資金もない。生活保護を受けようと地元の福祉事務所に相談したところ、当面は漫画を描かず日雇い労働で生活基盤を整えることを勧められたというのだ。
知人宅にもいられなくなった内田さんは、寝袋に潜り込み、いてつく公園で眠れぬ夜を過ごしたこともあったという。
仕事でつながりがある歌人・作家の枡野浩一さん(52)から「ホームレスになったことを公表したらどうか」と勧められ、2月にインターネットの作品投稿サイト「note(ノート)」に「とうとうホームレスになってしまった」と題して一連の経緯を発表したところ、大きな反響があった。
最低賃金を下回る
朝日新聞も4月14日、そんな内田さんの近況を伝えている。
救いの手を差し伸べてくれたのは、行政ではなく、友人や、生活困窮者を支援する一般社団法人「つくろい東京ファンド」(稲葉剛・代表理事)だった。なんとか都内にある同ファンドの個室のシェルターに入ることができたという。
内田さんは、生活保護は申請せず漫画家として再起を図ることを目指している。4月30日まで、内田さん、枡野さん、イラストレーター・目黒雅也さんの合作を展示・販売する「一人一人一人展」が東京都杉並区西荻南3丁目の「BREWBOOKS」で開かれている。内田さんの絵本「みんなわんわん」(好学社)も5月末に復刊予定だという。
漫画評論家、紙屋高雪さんの『マンガの「超」リアリズム』(花伝社)によると、漫画大国日本に漫画家はざっと1万人。そのうち「メシが食えている」のは1000人程度だそうだ。多くが「ワーキング・プア」で、時間給でいえば最低賃金を下回ると指摘されている。内田さんの窮状は、多くの漫画家にとって他人ごとではない、身につまされる話といえそうだ。