壮大な社会実験は世界をどこに導くか

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デジタル化の「いいとこどり」は可能か

   他方、基幹的技術やインフラで先進国企業が優位性を保つなかで新興国企業が先進国企業をどこまで追い上げることができるか、デジタル経済がはたしてどのくらい(質の高い)雇用を生み出すことができるか(雇用について筆者はそれほど悲観していないようだ)といった課題もある。

   また、本書では、2014年から2017年にかけて、政治的自由のスコアが低い国でインターネットを通じた決済の利用が進んでいるデータが示されている。従来、インターネットの普及等が「より豊かで透明性の高い社会」や「国境や検閲のないネットワーク空間」につながるのではないかと期待されてきたところがあるが、最近では「権力側がデジタル技術を活用して社会の関心と世論をつぶさに観測し、管理・統制を強めている」ことが懸念されている。

   デジタル化とこれからの働き方や雇用のあり方、便利さと社会の安全・安定の確保や個人情報保護との関係は、先進国、民主主義国にも通じる問題だ。デジタル化でフェイクニュースが作られやすくなったというような問題もあるが、誰がフェイクと認定するのか話はそれほど簡単でもない。アプリケーションの開発は短い期間で導入・実装が繰り返される。基幹的技術やインフラでの先進国企業や大国間での競争も激しい。見方によっては世界全体で壮大な社会実験を行っているようにもみえる。現在生じている大きな変革にどのように向き合うか。よく考える必要がありそうだが、答えはそう簡単でもなさそうだ。

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