歪(いびつ)の美 神崎恵さんは同じ顔の氾濫が「不思議で不気味」

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自分への自信

   冒頭の問いかけにもあるように、若い人が同じ顔に見えたら老いの入口だろう。私も、アイドルでいえば「モーニング娘。」や初期の「AKB48」くらいまでは顔と名前が何とかつながったが、SKEやらNMBやら○○坂などが出てきたあたりで諦めた。ジャニーズ系など男性アイドルはハナから放置である。

   神崎さんは、若い女性の顔が「同じ」になった背景として、化粧や美容の技術が向上したことを挙げる。そこに女優かタレント、はたまたモデルか、万人が「憧れる顔」が登場し、多くが競うように「同じ加工」に勤しむことになる。

   結果として、持って生まれた顔のオリジナリティは希釈されていく。逆にいえば、個性的な顔立ちには希少価値が生じる。神崎さんはさらに踏み込み、未整備の歪さを「かわいい」「きれい」と評価している。タレントや女優のキャリアもある美容研究家が言うのだから、自ずと権威が付与されるというものだ。自分の顔に自信を持とうというメッセージでもあろう。それもナチュラル、オリジナルの価値を見直そうと。

   筆者も言うように、美醜のスタンダードはすぐれて文化的な事柄で、時代により移ろい、また同時代でも国や民族によって異なる。とはいえ「同じ顔」を競うのは、文化とは別物の、むしろ逆向きのベクトルのように思えるのだ。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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