父はアマチュアの金管楽器吹き
ロッシーニの父ジュゼッペは、本職は食肉処理場の管理人でしたが、アマチュアの金管楽器吹きであり、母アンナは美しい声を持っていました。しかし、北伊のアドリア海沿岸のペーザロにジョアッキーノが生まれたとき、伊の政治状況は、彼らを運命の激動の中に放り込むのです。すなわち、教皇領であったペーザロは、北の国オーストリアの支配下にあり、同時にナポレオンという英雄が現れた仏軍にも狙われる状況にあったのです。
自由を愛し血気盛んな彼の父はナポレオン心酔者で、直接の原因は別でしたが、一種の政治犯のような形で、投獄されてしまうのです。4歳の幼いジョアッキーノを抱えた母はボローニャに出て自分の母、すなわちロッシーニにとっては祖母に子供を預け、地元のオペラ・・というより旅回りの一座といったほうが良い劇団に参加するのです。仏軍が侵攻してきて、父は獄中から解放されたものの、すっかり生気をうしなっていたので、母は彼も劇団に誘うのでした。