孤独のレッスン 下重暁子さんは、コロナ禍は自分を知るチャンスだと

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結語でバランス

   〈孤独の種を自分の心に蒔き、水をやり育てた〉...10歳に満たない少女の心理描写として、健気や可哀そうを通り越して、すさまじい表現である。

   まず、誰もが下重さんのように強いわけではない。人間は多くが甘えん坊で、孤に耐えられる人はそう多くない。まして孤を楽しめる人など珍しいだろう。そんな余裕はない、という声が津々浦々から聞こえてくる気もする。

   英国に続き日本が「孤独担当」の大臣を置いたのは、少なくとも表向きは、「孤」に弱い大多数のための施策を強化するためである。自殺の多発など、コロナ禍の社会的影響を政府が重く見たからにほかならない。

   しかし下重さんは、家族単位で括りたがる国への疑念に触れる。孤独の伝道師はブレないのだ。旗幟鮮明ゆえに、同調者もアンチも多い筆者。私の場合、だいたい納得することが多いのだが、本稿についてはその鉄壁の意志に、やや引いた部分もあった。

   筆者も強すぎると思い直したか、最終段落の「その上で知る人恋しさもある」「コロナ禍の中、私も不安やイライラはつのる」でバランスを取ろうとしたようだ。ここらが、社会活動家と文筆業の分かれ目なのかもしれない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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