米大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が「リアル二刀流」ぶりを発揮した。2021年4月5日(日本時間)のシカゴ・ホワイトソックスとの試合に2番・投手として出場したのだ。
打っては先制ホームラン、投げては4回まで無失点の活躍。しかし勝ち投手の権利がかかる5回のマウンドで、不運の連続に見舞われた。
さっきまでストライクに取っていたのに
3対0のリードで迎えた5回表、ホワイトソックスの先頭打者はビリー・ハミルトン選手。大谷投手の3球目、外角へのスライダーはボールとなったが、3回に同じように外角スレスレの球をアダム・イートン選手に投じた際にはストライクとコールされており、球審の判定が厳しくなったようにも感じさせる場面だった。
NHK BS1で解説中の武田一浩氏も「さっきまでは(ストライクに)取ってくれましたよね」と指摘。それでもこの打者を打ち取り1アウトとなった。次のニック・マドリガル選手は3球目を転がして中前打。続くレウリー・ガルシア選手は二ゴロとしたが、二塁アウトも一塁は間に合わず走者を残した。
ここで併殺が取れていれば――日本のファンが後々そう思ってしまう展開となっていく。
イートン選手を打席に迎えた場面、大谷投手による一塁へのけん制が逸れて悪送球となり、ガルシア選手は三塁まで進んだ。
ここから制球が乱れ、連続四球により二死満塁。中でも5人目のホセ・アブレイユ選手に投じた4球目は低めの際どいコースが、またもボールに。ここでも武田氏は「さっきあの高さでストライク取ってるんですよ」と、判定の揺らぎを指摘した。
暴投、捕逸、悪送球
そして6人目、ヨアン・モンカダ選手に投じたスプリットは暴投となり、左打席方向にワンバウンド。この間に三塁のガルシア選手が生還して初失点となった。
そして悲劇が起きた。フルカウントからの7球目、内角に外れた低めのスプリットで空振りを奪うが、マックス・スタッシ捕手が球を取り損ねて捕逸。打者は振り逃げで走りはじめた。
すぐに一塁に投げるも、今度は悪送球となり三塁走者が生還。こぼれ球を拾ったデビット・フレッチャー二塁手が本塁カバーへ入った大谷投手に送球したが、球は高く二塁ランナーもホームに帰り同点に。さらに本塁の真上でジャンプして捕球を試みた大谷選手は、着地時に二塁走者と交錯。スライディングが脚に直撃して負傷し、無念の降板となった。
本来なら三振で終わりのはずが振り逃げで同点の「悪夢」。しかも、大谷投手のスプリットは大きく外れたものではなく、記録は捕逸だ。そのうえ捕手や二塁手の悪送球が続き、大谷投手の勝ちが消えた。
球審の厳しめの判定や相次いだ守備のミス、そしてクロスプレーの末の負傷。5回に不運が凝縮した格好だが、それでもあと1人で勝ち投手のところまで迫り、5回に入っても時速160キロ超の速球を投げ込んでいた。けがの容体は気になるものの、今後の二刀流の活躍を期待させる試合だった。