山に憧れて 小川糸さんはベルリンから戻り、澄んだ水と空気を探しに

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リモート時代に

   海か山、どちらかを選べと言われたら海派の私だが、山に抱かれた生活の魅力は想像して余りある。山には緑がもれなくついてくる。稜線を出入りする太陽や、陽光に反応して刻々と移ろう山肌。そこを、春夏は花、秋は紅葉、冬は雪が彩る。

   小川さんは「目の中に、美しい景色を入れて生活したい」という。同じことを考える人は多いとみえ、私の友だちにも退職後に安曇野(長野県)や清里(山梨県)に移住した人がいる。文筆業をはじめ、対面でなくても成立する仕事は居住地の自由度が高い。

   リモート勤務が一気に拡大したコロナ時代、山(海)暮らしは生き方のトレンドになるかもしれない。

   ところで、掲載誌は裁縫や手芸など小物中心のテキストである。連載タイトルにある山小屋がそれにどう絡むのか、まったく絡まないのか。まさか小屋をハンドメイドしてしまったのか。もろもろは次号を待つしかない。巧い初回だと思う。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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