リモート時代に
海か山、どちらかを選べと言われたら海派の私だが、山に抱かれた生活の魅力は想像して余りある。山には緑がもれなくついてくる。稜線を出入りする太陽や、陽光に反応して刻々と移ろう山肌。そこを、春夏は花、秋は紅葉、冬は雪が彩る。
小川さんは「目の中に、美しい景色を入れて生活したい」という。同じことを考える人は多いとみえ、私の友だちにも退職後に安曇野(長野県)や清里(山梨県)に移住した人がいる。文筆業をはじめ、対面でなくても成立する仕事は居住地の自由度が高い。
リモート勤務が一気に拡大したコロナ時代、山(海)暮らしは生き方のトレンドになるかもしれない。
ところで、掲載誌は裁縫や手芸など小物中心のテキストである。連載タイトルにある山小屋がそれにどう絡むのか、まったく絡まないのか。まさか小屋をハンドメイドしてしまったのか。もろもろは次号を待つしかない。巧い初回だと思う。
冨永 格