新型コロナウイルスの感染拡大により自粛する人が増加し、飲食店の売り上げに影響が出ている。リクルートライフスタイルの「ホットペッパーグルメ外食総研」によると、消費者の行動や意識は新たなものに変化しつつあるようだ。
ホットペッパーグルメ外食総研研究員の稲垣昌宏氏は、日本の未来に関する情報発信を目的とした「コレカラ会議」の第5回の中で、外食店の味や付加価値を家で楽しむ「イエナカ外食」が注目を集めていると2021年3月18日に発表した。
外食店からのテイクアウトが目覚ましく伸びる
「コレカラ会議」は、美容や飲食など幅広い事業領域を横断し見渡すことで、世の中のさまざまな「兆し」を見つけることをコンセプトとしている。
リクルートはこれまでも自社サービスを通して事業者に寄り添ってきた。そしてコロナ禍でも「なんとかお店を続けたい」「お客さんに喜んでもらいたい」と願う経営者を支援するにあたり、「今できることは領域を横断して不可逆な変化から見える兆しを発信することではないか」と考え、「コレカラ会議」の実施に至った。
発表によると、これまでの外食利用といえば「ハレの日」「ちょっとぜい沢」といったシーンが主だったが、コロナ禍ではこうした場面でも在宅食事需要が増加。また、外出自粛により、自宅にいながら「非日常」を味わえる手軽なレジャーと位置付けて、外食を家で楽しむ消費者も増えているようだ。
料理配達サービスの拡充やテクノロジーの進歩により、飲食店もこうしたニーズに対応。味はもちろん、非日常感を含めた「外食の価値」を家に持ち込める「イエナカ外食」が注目されているという。
「ホットペッパーグルメ外食総研」の調査によると、20年度上半期の外食売上が前年比でマイナス51.5%と減少した一方、中食(テイクアウトして家で食べること)売上は21.2%増加している。
とりわけ中食の購入先として、レストランといった外食店からのテイクアウトの割合が倍増(前年比)しているのが目立つ。19年4月に中食を利用した人に購入先を聞いたところ、外食店利用の割合は18.7%だったが、20年4月には39.4%に増加した。
お店の味を楽しめる料理セットに、小分けにしたワインも
外食が持つ価値を家に持ち込めるようにするため、飲食店も様々な取り組みをしている。
神戸市のイタリアンレストラン「チッチャ」では、人気のパスタメニューを「ミールキット」化してデリバリーしている。キットは茹でる前のパスタやソースなどで構成されており、調理法をユーチューブ上などで公開。外食並みの品質の味を再現できるようサポートし、「イエナカ外食」に新しい価値を実現している。
イタリアンレストラン「クインディ」(東京都渋谷区)では、20年3月からワインを小分けしたボトル(100ミリリットル)を物販コーナーで販売している。白ワイン・赤ワイン各5種類程度が用意されている。
通常の大きさのワインを買って飲み切れないという人はもちろん、その日の料理に合うワインを1杯だけを店に相談して買いたい人など、細かいニーズに対応可能だ。さらにオンライン通販ではソムリエが厳選したワイン3種セットなども販売。ワインの目利きによるおすすめ品など、外食ならではの付加価値を家で楽しめる。