コロナ禍で再び注目
この現代語版の刊行までは、実は長いヒストリーがあった。内務省による当時の報告書は、歳月を経る中で「幻の書」となり、存在すら定かでなくなっていた。それをウイルス学者の西村秀一医師がたまたま古書店で発見、歴史的にも重要な文書ということで平凡社が2008年、「東洋文庫」に組み込み、『流行性感冒――「スペイン風邪」大流行の記録 』(東洋文庫)として復刻刊行した。
ところが、同書もほどなく絶版状態となっていた。それが昨年来の新型コロナウィルスの大流行で再び注目されるようになり、平凡社は重版、さらに今回の現代語訳へと発展した。現代語訳は、西村氏が担当している。
今回の現代語版では、復刻版では割愛していた英米の詳細な調査報告を収録したほか、当時、国民の啓発のために作られた8枚のポスターも、カラー印刷で収載している。