数学の発展の過程とも通じるところがある
著者は数学教育・教師教育の研究者・実践者。著者による日本語版へのまえがきなどで分かるように、本書はG.Polyaの数学的思考や問題解決に関する一連の業績に大きく影響を受けている。「いかにして問題を解くか」(2013年3月21日の本コラムも参照)や「数学の問題の発見的解き方(新装版)」(1・2)は書店でも見かけるので、現在でも幅広く読まれているのだろう。
「面の数+頂点の数=辺の数+2」(オイラーの多面体公式)がとりあげられる「数学における発見はいかになされるか」(1・2)の第Ⅲ章(立体幾何学における帰納)や、その続編にもみえるI.Lakatosの「数学的発見の論理―証明と論駁―」をみると、専門家による制作途上の数学でも、専門家たちの間で、様々な試行錯誤や観察が行われたり、推測したり、証明したり、批判を受けて証明の改良をしたりしながら、知識を練り上げていく努力が行われることを感じる。これらの著作は、いずれも今では手に入りにくいように思うが、機会をみつけて改めて読んでみたいと思う。
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