「潤い」の源とは
雑誌のプロフィールによれば、岩崎さんは医学、薬学、看護学などの視点から「人と植物のよりよい関係」を探求中。病院緑化を含む園芸療法のほか、アロマセラピーや森林療法についても科学的にアプローチしている。
その道の専門家に教えられずとも、植物が心の健康にいいのは何となく分かる。その姿に癒され、香りに安らぎ、日々の変化にもろもろの移ろいを気づかされる。
わが家のリビングにも観葉植物がある。それも長いこと。
東南アジア原産のアロカシア・アマゾニカというサトイモ科の鉢植えで、これが丈夫というか健気というか、大した世話もしていないのに15年近く生きている。最初は上記のような効用を期待し、おつりが出るほど応えてくれたのだが、今はこいつを死なせてなるものかと、正直ストレスのほうが多い。
そんな鉢植えに対し、切り花には限りがあり、間もなく消えるという前提で楽しめる。岩崎さんが書く通り、枯れたら哀れを感じるが、ペットロスほどの悲しみはない。植物は生きてはいるが、人の勝手でモノと割り切ることもできるのだ。
その命を認めてもよし、認めなくてもよし。扱いすべてを己に委ねられる心地よさこそ、岩崎さんが言う「潤い」の本質なのかもしれない。
冨永 格