日本の歴史学者が直面する「大問題」

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「ジェントルマン」の意義を問い直す

   川北氏の代表的著作は、「工業化の歴史的前提」(岩波書店 1983年)であり、ロングセラーは、「砂糖の世界史」(岩波書店 96年)であるが、評者にとって印象深い1冊が「イギリス 繁栄のあとさき」(ダイヤモンド社 95年、講談社学術文庫 2014年)である。文庫版の序で、「歴史学という営みは、単に過去の思い出を温めることではなく、未来をめざす未来学であるというのが、年来の私の主張である」と持論を展開する。

   そして、「はじめに 不況か『衰退』か-19世紀末のイギリスと20世紀末の日本」で、本書で考えてみたいのが、バブルの崩壊が、一時のエピソードなのか、長く続く「日本病」と「日本沈没」のはじまりなのか、だとする。それを川北氏が研究してきたイギリス史を踏まえて考察するものである。

   興味深いのは、イギリスの成功が、かならずしも経済合理性を持たない「ジェントルマン」がイギリス社会のリーダーであったからこそであるという指摘である。

   「イギリスは、工業生産の面ではいかに『衰退』しても、社会や文化のレベル、ひいては広い意味での生活水準の点では、さして低下していないと言えるかもしれない。わが国の工業化時代が、『禁欲・勤勉』の倫理を象徴する校庭の二宮金次郎の石像とともに展開したことは、ある程度、事実かもしれない。しかし、『経済合理主義者』ばかりの社会が、長期的にはひどく脆弱であることも、確実である」とする。

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