「彼女が絹ごし豆腐で麻婆豆腐を作ってた......別れたほうがええか?」。普段、「木綿豆腐」で作った麻婆豆腐しか食べていないという人物が、インターネット掲示板で怒りを露わにした。すると「絹ごし豆腐」派から、絹ごしを使うとおいしいと声が上がり、「木綿VS絹ごし」の構図に。
記者が見た限り「絹ごし豆腐」派がやや優勢だ。「麻婆豆腐」には、どちらの豆腐を使うのがよいのか。「マーボといったら」のキャッチフレーズでおなじみの家庭用調味料「麻婆豆腐の素」の製造・販売を手がける、丸美屋食品工業(東京都杉並区)に取材した。
のどごし、口当たりの良さでは
「木綿と絹ごし、どちらを使って作ってもおいしいですが、おすすめなのは『絹ごし豆腐』です」
同社の広報宣伝室担当者はこう答えた。商品に付属している「トロミ粉」と絹ごしの相性が良く、「より、なめらかな『のどごし』が楽しめるため」だそう。公式サイトにある「麻婆豆腐の素」を使った麻婆豆腐の作り方紹介動画でも、絹ごしを使用している。
料理のプロの見解はどうか。山梨にある中華レストランのスタッフに話を聞いた。現在はメニューにないが、かつて麻婆豆腐を提供していた際は「口当たりの良さを重視して、絹ごし豆腐を使っていた」。予め「一口サイズに切って、熱湯でゆでておく」のがポイントだそうだ。下処理することで余分な水分が抜け、柔らかくなって味がしみ込みやすくなり、さらに煮崩れもしにくくなる。
「本場風手作り」するなら
絹ごしに軍配が上がった――かのように見えるが、「辛さ」によっては「木綿が優勢」になる場合があるようだ。
大豆加工食品の製造および販売を行う相模屋食料(群馬県前橋市)が公式サイトで紹介している、「麻婆豆腐に関する試食試験」結果に面白いデータがある。2011年6月に実施した、関東地方1都6県在住の20~69歳の女性1000人に対するインターネット調査だ。
例えば、「麻婆豆腐の素(甘口)」を使う場合は「絹派がやや優勢」だが、「麻婆豆腐の素(辛口)」になると、木綿豆腐が勢力を増して「引き分け」に。家庭用調味料不使用、「本場風手作り」では、「木綿派が優勢」に転じた。理由として「本場の辛さには、木綿で食べごたえがある方が合う」「味が濃い分、木綿は味がぼやけず、すごくおいしい」「食感がしっかり感じられる方が辛みと旨さが引き立つ」といった声が寄せられている。
相模屋食料の公式サイトによると、木綿は「固めてから一度崩し、押し固めているため味しみがよく、また崩れにくい」のが特徴で、煮物や炒め物、豆腐ハンバーグにおすすめ。一方で絹は、なめらかでつるっとした食感が楽しめるので、冷や奴やサラダ、汁物の具などに使うのがよいという。
木綿と絹、それぞれに良さがあるので、麻婆豆腐でどちらを使っても「間違い」ということはなさそうだ。