「ものむらいだって」。眼科に通院した記者の母が、検診結果を無料通話アプリ「LINE」で伝えてきた。ん? まぶたが腫れて、痛みやかゆみを伴う病気「ものもらい」の誤字か――。
疑問に思って調べると、新宿東口眼科医院の公式サイトには「『ものもらい』は『ものむらい』、『めばちこ』ともよばれています」と説明があった。どうやら間違いではないようだ。ツイッターにも「ものむらい」にかかった、という投稿がいくつか見られる。
幼い頃からずっと「ものむらい」
ロート製薬(大阪市)がインターネット上で公開している「ものもらいMap」によると、「ものもらい」は、医学的には「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」とも言う。ただ地域によってさまざまな呼び名があり、「ものもらい」は東日本を中心に使われているそうだ。他にも「めいぼ」「おひめさん」など、地方ごとに方言が用いられているとある。
「ものもらいMap」は、全国の「ロートくらぶ」会員から寄せられた約1万件のアンケートデータを集計して地図にまとめた、「麦粒腫」の呼び名の全国分布だ。呼び名検索欄に「ものむらい」と入れると、使用率の高いエリアトップ3は「愛知県(3%)」、「静岡県(3%)」、「東京都(2%)」だった。記者の母は東京で生まれ育っており、幼い頃からずっと「ものむらい」だと思っていたという。
このように「一文字違い」だが、どちらの呼び方でも正しい言葉は他にもある。例えば、手出しをせず、傍観している様子を表す「手を拱く」。「拱く」は「こまねく」でも、「こまぬく」でも読みとしては正しい。「腕を組む」意味がある。
「うる覚え」と「うろ覚え」
一方で、「一文字違い」で正誤が分かれる言葉も多い。しばしばテレビやニュースの「言葉クイズ」で取り上げられるのが「うる覚え」と「うろ覚え」だ。
正解は「うろ覚え」。ある事柄について、覚えている内容があいまいで、ぼんやりしている状態を指す。「広辞苑 第七版」には漢字で「疎覚え」とあり、「おろおぼえ」という読みも当てられている。文字通り「うろ覚え」にならないようにしたい。