堤監督「本気の『遊び』をやるぞ」
――どういう経緯で監督や役者が集まったのですか。
広山:コロナ禍で仕事が思うようにいかず、「このまま2020年が終わるのは嫌だ」という一心で20年9月29日に、以前から親しくしていた福宮さん、河野さんに「一緒に作品を作らないか」と声をかけました。文化芸術団体を対象に、取り組みに必要な経費を支援する文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」申請締切日寸前のことです。申請に必要な書類作成が結構難しく、1人では厳しかったのですが、福宮さんがサポートしてくれてギリギリ間に合いました。
――最初から堤監督がメガホンを取ると決まっていたのでしょうか。
広山:いえ、まったくそんなことはありませんでした!元々ご縁があり、映画を作ろうと思っているとご連絡を差し上げたところ、内容に興味を持ってくださったんです。
福宮:堤監督ファンにとっては、「これぞ堤幸彦!」と感じられる、「原点回帰」あるいは「真骨頂」と言える作品になっていると思います。制作にあたって、堤監督が「本気の『遊び』をやるぞ」と仰っていたことが忘れられません。撮影は11月21日、22日の2日間のみでしたが、非常に濃密な時間でした。
――現場の雰囲気はどうでしたか。
河野:とても上手く回っていたと思います。全員の気持ちに「温度差」がなかったのが大きかったです。自分が必死に演技をしていても、共演者に「やる気が無いな」と感じると冷めてしまうので...。
あとは、「泣き」の演技前に感情を溜めておきたくて、1人で静かに過ごしていたのですが、2人が自然と察して放っておいてくれたのもありがたかった。
広山:各々、演じたいように演じられる「信頼関係」がありましたね。
福宮:私は河野さんと今回の作品を通じて知り合ったのですが、初対面時に「久しぶり」と言ってしまうくらいでした(笑)。顔を合わせる前に文字でやりとりはしていましたが。そのくらい打ち解けて、3人で楽しく作り上げられましたね。
広山:私自身、30代の女性なのですが、まさに同年代に刺さる内容になっていると思います。みんなが普段「言いたい、でも言えない」と思っていることが、たくさん詰まっているエンターテインメント作品です。ぜひ見て、スカッとしてもらえたら嬉しいですね!
○プロフィール
河野知美(こうの・ともみ)
迫田公介監督作品『父の愛人』でビバリーフィルムフェスティバル(USA)でベストアクトレス賞受賞。NHK大河ドラマ『西郷どん』や高橋洋監督作品『霊的ボリシェヴィキ』、三宅唱監督作品『呪怨:呪いの家』などに出演。
広山詞葉(ひろやま・ことは)
映画「ファーストラヴ」、ドラマ「最後から二番目の恋」「軍師官兵衛」、舞台「後家安とその妹」など出演。プロデュース作「今夜新宿で、彼女は、」では数多くの女優賞作品賞を受賞。主演映画「ひとつぼっち」本年公開。
福宮あやの(ふくみや・あやの)
2011年声優としてデビュー以降『Marriage Story』、『グッド・ファイト』など多くの作品に出演。2014年にはteam.鴨福を立ち上げ、主宰として毎年朗読劇公演を行っている他、司会やナレーターとしても活躍している。