SEKAI NO OWARI、ベストアルバム
過酷な世界にどう向きあうか

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Kidsの頃の自分たちに向けた歌

   初のベストアルバム「SEKAI NO OWARI 2010~2019」はDISC1とDISC2で印象が変わる。

   思春期の「なぜ」「どうして」という疑問がそのまま歌になったようなDISC1の曲たちの成長した姿がDISC2のようだ。一曲目の「RPG」は、「怖いものなんかない 僕らはもう一人じゃない」と始まっている。Saoriが詞をNakajinが曲を書いている3曲目の「プレゼント」には「ひとりぼっちになりたくない」と「ひとりぼっちにさせないから」というそれぞれの側の歌だ。

   彼らのオリジナルアルバムは4枚。2019年に二枚同時に発売された「Eye」と「Lips」はそうした成長を感じさせるものだった。

   「ベストアルバム」DISC2の8曲目の「LOVE SONG」は、「Eye」の一曲目だ。こんな風に始まっている。

いつの時代もいるんだ
「大人はいつも矛盾ばっかり」とか「嘘ばっかり」って言うKids
いつだって時間はそう
諦めを教えてくれる
君達をいずれ
素晴らしい大人にしてくれる

   Kidsに向けた視線は、もうKidsの頃のものではない。時が経つことで変わってゆくこと。たとえば、なぜスカートが短くてはいけないのか、なぜ男の子は許されて女の子は許されないのか。なぜこの国では悪であの国では正義なのか。なぜ偉い人は咎められずそうではない人は罰せられるのか。

   そんな素朴な「なぜ」にがんじがらめになっていたKidsの頃の自分たちに向けた歌でもあるのだろう。

   音楽が友達を作る。ひとりぼっちじゃないことを教えてくれる。

   アルバム制作中に出産したSaoriはツアーのステージで「メンバーのみんなが子供を受け入れてくれて、多くの男子バンドの中の女子が感じる疎外感を感じなかったのが嬉しかった」と話していた。

   「子供はみんなで育てる」という在りようも彼らの成長の証であり「共同体としてのバンド」の未来でもあるのだと思った。

   ベストアルバム最後の曲「RAIN」は、こう終わっている。

雨が止んだ庭に 花が咲いてたんだ
きっともう大丈夫
そうだ 次の雨の日のために 傘を探しに行こう

   過酷なこの世界にどう向き合ってゆくのか、そして、どう大人になってゆくのか。

   かれらの残した歌はそのための希望でもあるのだと思う。

(タケ)

●プロフィール

タケ×モリ プロフィール
タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーティスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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