「現代の日本につながる問題」
ジェンダーやフェミニズムにもとづく新たな社会的理念は、20世紀後半になって世界的に公認された形になっている。しかし、過去の男性中心主義の時代に育った人は、簡単には適応できない。頭では重要性を理解していても何かの拍子に本音を口走ってしまう。森会長の「女性蔑視」とされた発言などはその一例だ。
本書は「第I部 西洋における女性差別の正当化根拠――神・契約・法」、「第II部 日本における女性差別の言説と実態―――儒教・「家」・明治民」に分かれている。「第II部」では「明治国家による家父長制形成の試み」「夫婦関係から始まる理想社会の構想――福沢諭吉の文明社会論」「現代の日本につながる問題」などが取り上げられている。
エッセイストの小島慶子さんは、「ジェンダーの観点から思想史を読み解く、平易で明快な筆致に引き込まれます」と推薦文を寄せている。
類書では、『近代皇室の社会史』(吉川弘文館)などもある。明治、大正期の様変わりする「家族」の問題を「皇室」という角度から迫っている。大正天皇が、明治天皇と異なり、「側室」を持たなかった理由などを、社会の変化という視点から克明に論じている。
また、『「許せない」がやめられない―― SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』(徳間書店)は、現代社会で横行する様々な「バッシング」や「怒りの爆発」の根源を、「ジェンダー」をキーワードに分析しているところが新鮮だ。