司馬さんが描けなかった昭和に踏み込む
『歴史探偵 忘れ残りの記』は2月刊行を前に、昨年末から年明けにかけて半藤さんが最期までゲラに目を通していた書籍。
1999年から2020年まで、文藝春秋営業部が書店向けに配布していたパンフレット「新刊のお知らせ」の巻頭に掲載されていたコラムを中心に編集されたもの。軽妙洒脱で視野の広い半藤さんの人柄と足跡が偲ばれる内容となっている。
「わたくしは、ゴルフもやらず、車の運転もせず、旅行の楽しみもなく......ただただ昭和史と太平洋戦争の"事実"を探偵することに若いころから妙にのめりこんできて、一人でコツコツと続けて、いつの間にか九十歳の老耄(おいぼ)れとなってしまった」と「あとがき」に記している。
半藤さんは東京大学文学部卒。文藝春秋入社後、「週刊文春」、「文藝春秋」、「くりま」編集長などを歴任。専務取締役、常任顧問を経て退社。『ノモンハンの夏』で山本七平賞、『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、『昭和史』で毎日出版文化賞特別賞。ほか著書多数。2015年には菊池寛賞を受賞した。
日本の近現代史を一般読者にもわかりやすい形で示した作家としては、司馬遼太郎さんが有名だが、司馬さんは、「昭和」についてはほとんど書かなかった。これに対し、半藤さんは、司馬さんが描き切れなかった戦前の「昭和」にこだわり、同世代や戦後世代にその真実を伝えることに心血を注いだ。
J-CASTでは半藤さんの最近の著書、『なぜ必敗の戦争を始めたのか』(文春新書)、『歴史と戦争』 (幻冬舎新書)などを紹介済みだ。