自分と家族の幸せを考えるヒント

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■『「家族の幸せ」の経済学 データ分析で分かった結婚、出産、子育ての真実』 (山口慎太郎著・光文社新書)

   人口動態調査(厚生労働省)の速報によると、一昨年(2019年)12月から昨年(2020年)11月までの1年間に、約54万件の婚姻、約88万人の出生、約20万件の離婚があった。

   現在、我が国は、若い世代を中心に人口減少局面であるし、出生率も低い水準で推移していることに加えて、昨年来の新型コロナウイルス感染症拡大の影響などもあって、婚姻や出生の低迷・減少が懸念されている。それでも、たくさんの出会いがあり、夫婦・家族が生まれている。多くの若者たちが、結婚や子育ての喜びを感じるとともに、様々な悩みに向き合っている。

   本書では、「結婚」「赤ちゃん」「育休」「イクメン」「保育園」「離婚」を各章のテーマに、一般によく言われていること、神話や信仰とも言えそうなこと、若い世代・夫婦がプレッシャーに感じたり悩んだりしていること、普段何となくそんなものかなと思っていることなどが、日本や諸外国の経済学、社会学、発達心理学、医学・疫学などの調査・研究(データ)を用いて、ひとつひとつ丁寧に確認されていく。

「神話」と「真実」

   「育休の経済学」(の章)では、子どもの育つ環境は極めて重要だが、育児をするのは必ずしも母(のみ)である必要はないことが確認される。1993年に育休期間を3年に延長したドイツの政策評価では、生後、お母さんと一緒に過ごした時間の長さは、子どもの将来の進学状況・労働所得などにはほぼ影響を与えていなかった。

   同様の結果は、オーストリア、カナダ、スウェーデン、デンマークにおける政策評価でも報告されていて、さらに、著者の、出産や就業行動の分析と数理モデル化による研究なども踏まえると、母親の就業への効果などを総合して考えれば、育休は1年で十分で、以後は質の高い保育園の整備が重要であるという。

   「保育園の経済学」では、アメリカで1960年代に幼児教育のプログラムを受けた3~4歳児を40歳になるまで追跡調査した研究や、2001年と2010年の出生児を対象に継続的に行われている日本の縦断調査(パネル調査)を用いた著者の研究などから、幼児教育が子どもの発達にプラスの影響を及ぼすことが示される。

   さらに、質の高い保育サービスは、子どものためだけでなく母親の幸福度も上げ、親の子どもに対するしつけの質を向上させ、虐待の抑止力にもなり得ることも示される。将来の社会・経済全体にとってプラスの面をもつということになる。

   最近ではあまり気にしないという方も多くなってきたかも知れないが、これまで(かつて)母親へのプレッシャーとして作用してきたとされるいわゆる三歳児神話(ここでは、子どもが3歳になるまではもっぱら母親が育てるべきという考え方の意)も、データからみれば「神話」であり「真実」とは異なるということになる。

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