冬のビール 眞鍋かをりさんが酷寒のベルギーで知った一杯の温もり

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実体験に説得力

   「ビール王国」は、隔月刊「ワイン王国」の別冊として年に4回出版される。版元は雑誌名と同じワイン王国。愛飲者のほか、飲食業界で広く読まれているようだ。

   この種の雑誌の常で、すべてのコンテンツが多かれ少なかれお酒のPRになっている。ただ、宣伝臭が強すぎると訴求力が高まらないというジレンマがある。内容が読み物として面白く、具体的で説得力があり、かつ読後にビールの好印象がほんのり残る、というバランスが要求される。ここらは筆者というより、編集者の腕の見せ所だ。

   「実は冬でもビールが美味い」というテーマは、マーケティング的にはオフシーズンの需要をどう掘り起こすかという狙いだろう。そこを、如何にして魅力的な装いの特集に仕立てるか。のみ込みが早そうな眞鍋さんは、こうした編集側の狙いによくこたえている。

   冷え込むブリュッセルでの体験は、ビールの温もりを語るに相応しい。一読してベルギービールを冬に飲んでみたいと思う人は多いだろうし、通販を含め、日本のリビングでそれを実現する手段はいくらでもある。

   私もブリュッセル駐在時にあれこれ楽しんだ。ジョッキでグビグビ、プハーというのが日本流なら、かの地では年配女性がカフェのテラスで、新聞を読みながらちびちび飲んでいたりする。乾いた喉を潤すのではなく、そのものを味わうらしい。

   「家飲み」主流の冬、個性派ぞろいのベルギービールは、一人二人で静かにやるのに向いている。では、小声で乾杯。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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