コロナ愛国 苅谷剛彦さんは内向きの視線がナショナリズムの源とみる

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領土内の居心地

   苅谷さんは経済学者ではなく、教育格差の研究で知られる社会学者だ。コロナ絡みでは昨年、一斉休校を機に検討された「9月入学」についての発言も多かった。

   コロナ禍のもと、各国でナショナリズムが高まる傾向にある、という考察自体は目新しいものではない。とはいえ筆者は、短いコラムの中でその理由を分析し、従来との違いを解説し、今後の展開を予測する。要点が手際よくまとめられ、収まりがいい。経済誌のコラムだけに表現は少し硬いが、それでも学者の文章としてはこなれている。

   感染拡大を防ぐために国境を閉ざす→視線が内向きになりナショナリズムが高まる...このロジックは分かりやすい。国内の矛盾や難題から目をそらす従来型のナショナリズムは、外敵を作って国民の結束を訴えるのが常道で、今回は趣が異なる。

   本来ならハリウッド映画のように、地球的危機には人類が結束して立ち向かうべきだが、見えない敵を相手に、各国はそれぞれの領土内、それも都市部を中心に局地戦を続けている。ハリウッド映画ならリーダーシップをとるであろう米国大統領が、不幸にも「自国第一」の人物だった巡り合わせで、小さなナショナリズムが世界に拡散した格好だ。

   領土内の居心地を競う人類。ウイルスは「知ったことか」と国境を越える。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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