ベートーヴェンのほぼ唯一のバレエ作品 孤高の天才を表現したものだった

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プロメテウスに共感

   そして、1801年に、ベートーヴェンは生涯ほぼ唯一のバレエ音楽、「プロメテウスの創造物」を作曲しています。直接のきっかけは、作曲家ルイジ・ボッケリーニの甥でもあったイタリア人の舞踊家・振付師、そして作曲家でもあったサルヴァトーレ・ヴィガーノがウィーンでの公演にあたって、当地ですでに有名だったベートーヴェンに音楽を依頼したことでした。しかし、最高神ゼウスの命令に背いて、天界から火を盗み、その他・医学、数学、科学そして、音楽など文明の道具をも人類に与えることによって、ゼウスから永久に罰を受け続けることになったプロメテウスは、「孤高の天才」「人類に対する啓蒙の使者」のメタファーとして最適であり、ベートーヴェンもかなり共感を覚えていたはずです。

   残念ながら、バレエとしての「プロメテウスの創造物」はあまり成功を収めることができず、現在では序曲のみが独立して頻繁に演奏されます。しかし、ベートーヴェンの「不屈の精神で困難に打ち勝つ超人」というテーマは、これ以後の他の作品にも多く見られ、彼の作品の一つの大きなモチーフとなってゆきます。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミエ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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