結婚記念日 松任谷正隆さんは、特別な年の夜景を覚えておこうと思う

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なんだか人恋しく

   過去の結婚記念日のうち、松任谷さんが覚えているのは2回くらいで、あとは祝ったかどうかも含めて覚えていないそうだ。まあ、そんなものか。しかし2020年の記念日は「なんとか覚えておきたい」という。特別な年の、特別な日だからである。

   結婚記念日や誕生日は、何十回と重ねるうちにマンネリ化し、新鮮さは薄れていく。ところが、コロナ禍という未体験の生活環境は、それぞれの「年中行事」に新たな意味を与えた。「密」を避けるということで、大人数での寄り合いは難しくなる。あらゆる行事について中止や延期が検討され、「軽い」と判断されたものから省略された。

   しばらく会えない人が増え、だれもが人恋しいロマンチストになった。「生存確認」の儀式のようになっていた年賀状が見直され、虚礼だとナメていたことが実は地味ながら役割を持っていた、なんてこともあった。

   限りある人生の、限られた1年。コロナは「大事なもの、大事でないもの」をふるいにかけた。結婚記念日が大切という人がいれば、法事はやっぱり欠かせないと考える人もいる。それぞれの取捨選択を経て、忘れられない、かけがえのない映像が残される。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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