チョコレートは「元気や夢を与えてくれる」
――新型コロナの影響によって、選択される商品にも変化が生まれるとの見立てですね。コロナが猛威を振るった2020年、チョコレート業界にはどういった変化が見られましたか?
市川 オンラインショップを強化するブランドがとても増えました。商業施設が閉まっていた時期もありましたし、店頭ではなく家でチョコレートを購入する方がすごく多かった。各ブランドもオンラインショップの商品数を増やし、ページレイアウトを工夫し、ウェブ上に広告を出すなど試行錯誤しています。ただ、需要の変化については、一概には言えません。スーパーで買える大袋のチョコレートや板チョコは需要が増えています。しかし、デパートにあるような高級店や専門店は閉店を余儀なくされ、厳しかったと聞いています。
――単にチョコレート業界、と一括りはできないのですね。
市川 ローカルな店は地元の人が買いに来て逆によく売れた、という話もある一方で、いろいろ大変なブランドもありました。観光地が全滅してご当地チョコなんかも売れなくなりましたし。チョコが売れないとカカオの単価が安くなって、世界のカカオ農家は貧しくなってしまいます。ただ、それでも今はオンラインショップが一般的になりつつありますし、チョコレートは根強い人気です。これからも盛り上がっていってほしい、と心から思います。
――どうしてチョコレートは人気なのでしょう。ずばり、魅力は何だと思いますか?
市川 チョコって、一見すると茶色い塊じゃないですか。でもそれが作り手によって、美しい見た目、味、香りに仕上げられる。チョコだけでなく、商品パッケージ、ショッピングバッグ、直営店であればインテリアや制服も含めてすべてがそのブランドの「世界」になっています。私たちは、こだわり抜いて表現された「最高のもの」に、少し手を伸ばせば触れられるんですよね。それに、日本のマスマーケットのチョコも本当に安くておいしいですから。そうした最高の体験は、人を豊かにすると思うんです。私はチョコレートジャーナリストとして情報を伝えることで、今後も業界全体を応援していきたいです。人に元気や夢を与えてくれるものですからね、チョコレートは。
○プロフィール
市川歩美(いちかわ・あゆみ)
チョコレート愛好家。日本で唯一のチョコレートジャーナリスト・コーディネーター。幼少期からチョコレートの虜になった。民間放送局に入社後は番組企画・制作に携わり、本業をこなしながら2003年にペンネームでブログをスタート。次第に得意分野のチョコレートに特化した情報を発信するように。今ではテレビ、雑誌、イベントなど各メディアで365日チョコレート・カカオの情報を届けている。また、番組や記事の監修・企画・商品プロデュースも手掛ける。