セ・リーグとパ・リーグの「差」はどうなる?

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   【識者が大予想!2021年】

   2020年のプロ野球・日本シリーズでは福岡ソフトバンクホークスが読売ジャイアンツを下し、4年連続で制覇した。セ・リーグの巨人が制した12年以降、東北楽天ゴールデンイーグルス(13年)と北海道日本ハムファイターズ(16年)とソフトバンク(14・15年、17?20年)と、パ・リーグばかりが日本シリーズで優勝している。

   セ・パが共に争う交流戦でも、09年以外は全てパ・リーグのほうが勝ち数が多い状況が続いている。このセ・パの「差」は2021年ではどうなるか、高校野球やプロ野球を追ってきたスポーツライターの佐々木亨さんに予想を語ってもらった。(聞き手はJ-CASTトレンド編集部・田村今人)

  • インタビューに応じてくれたスポーツライター・佐々木亨さん
    インタビューに応じてくれたスポーツライター・佐々木亨さん
  • インタビューに応じてくれたスポーツライター・佐々木亨さん

パ・リーグは「力と力の勝負」

―――セ・リーグとパ・リーグには力の差があるとされていますが、この要因とはなんでしょうか。

佐々木 あくまで結果ですので、本当に力の差が実際に12球団それぞれあるのかっていうのは、なんともいえないっていうのは正直あります。ただ、日本シリーズでソフトバンクが投打で圧倒したのは事実です。
   どちらかといえばパ・リーグは力と力の勝負。ソフトバンクの柳田選手(柳田悠岐外野手)だったり、山川選手(埼玉西武ライオンズ・山川穂高内野手)とか、初球から豪快に空振りを恐れずにフルスイングするような選手がたくさんいる。それに対抗するためにピッチャーが育っていく土壌があります。
   やっぱりセ・リーグは細かい野球というか、戦術・戦略で詰めていって、バッターもそこに順応することで、守備もいいバランスのとれた選手が多いという印象があります。そういう野球の違いっていうのは昔からありますね。

―――ソフトバンク以外では、セ・リーグがパ・リーグに劣っているわけではないのでしょうか。

佐々木 どうでしょう。どちらかといえば一芸に長けているというか、個性的な選手が多いのがパリーグだなと。全体的にそういう野球を6球団ともしているイメージはあります。もちろんセリーグもそれぞれ個性ある選手はいますけど。対戦してみないとなんともいえないので、強さや弱さはなんともいえないです。

―――今年のシーズンを振り返ると、セ・リーグとパ・リーグの印象はそれぞれどうですか。

佐々木 セ・リーグでは巨人だと、ピッチャーの菅野投手(菅野智之投手)に坂本選手(坂本勇人内野手)、岡本選手(岡本和真内野手)と野手もそろってますし、投打の総合力で優勝という形になったのかなと思います。
   パ・リーグはここ近年の結果が示すようにソフトバンクが強いですね。出てくる選手がどんどん活躍している。3軍の機能もちゃんと生かし、育成っていう部分でもすごくいい形でやってるんじゃないでしょうか。若い力がやっぱり出てきますね。そういう力の強さもすごく際立ったんじゃないでしょうか。

しっかりした「ピッチャー」擁して接戦に

―――セ・パではDH制の有無が投手・野手の力の差につながっていると言われていますが、どう思いますか。

佐々木 投打の底上げにつながってる可能性はあると思います。DH制を導入しているパ・リーグにおいては、必然的に出場機会が増える野手(バッター)も育って強打者が揃う中で、それに対抗するピッチャーも育つという土壌が生まれた。全体の投打の底上げにつながっている可能性が十分にあります。
   だからといって、(セ・リーグでも)DH制をやったからそうなるかといえば分からないですね。球団の野球の方針もあるし、それぞれの資質などもあるので。

―――今年の千葉ロッテマリーンズは得点よりも失点の方が多く、打率はリーグ6位でした。しかしながら最後までソフトバンクに食らいつき、リーグ順位は2位になりました。今後ソフトバンクにセ・リーグが対抗するとしたら、参考にできる部分はあるでしょうか。

佐々木 それはありますね。多分千葉ロッテは、接戦で勝ち切っているっていうことですね。いかにして接戦へ持ち込めるか、1点差・2点差のゲームを作るか、最後勝ち切るか、終盤に逆転するか、という野球ができていたと思います。
   主導権を握り、そのままロースコアでいってピッチャーがしっかり抑えるとか、そういう接戦をいかに作れるかっていうのは1つキーワードになりますよね。もしかしたら千葉ロッテの戦い方が非常に参考になるかもしれないです。

―――パ・リーグには一芸に長けた選手が多いという話がありましたが、それが日本シリーズと交流戦の差にどうつながってきたのでしょうか。

佐々木 小さな話かもしれないですが、周東選手(ソフトバンク・周東佑京内野手)もやっぱり一芸に秀でています。ああいう「走ってくる選手がいるぞ」っていうだけで、相手選手は警戒します。で、甲斐選手(ソフトバンク・甲斐拓也捕手)のような強肩を持ったキャッチャーがいることも、相手チームにプレッシャーを与える要素になる。イメージとして、それも相手に与える大きな要素だと思います。そういう一芸がチーム力につながってるっていうのは確かに言えると思います。

―――それに対して今後セ・リーグが勝っていくには、「一芸」以外を磨く必要があるのでしょうか。

佐々木 野球ってピッチャーが大切だなと思うことが常々あります。短期決戦ならなおさら。ピッチャーがしっかりしていれば、そして接戦に持ちこめれば、熱い戦いになると思います。

―――ずばり2021年のプロ野球と日本シリーズはどうなるか、予想していただけませんか。

佐々木 ソフトバンクの強さは引き続き変わらないと思います。日本シリーズは、巨人・ソフトバンクと同じ顔ぶれになる可能性はある。このままでは巨人は終われないでしょうし、ここ2年間の悔しさっていうのは当然あるでしょうし、それに尽きると思いますね。「なんとしてでも日本一を獲るんだ」っていう熱を持ちながら。
   もしそのように2チームの戦いになれば、「打倒ソフトバンク」っていうところで、すごい熱いモノを持ちながらの戦いになっていくんじゃないかと思いますね。ソフトバンクはそれを迎えながら、安定した力を出していくんじゃないかなと思います。

佐々木亨(ささき・とおる)
1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立、高校野球・社会人野球にプロ野球と、野球全般において活動。大谷翔平選手をはじめとして、選手へのインタビューや記事執筆を手がける。著書に「道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔」 (扶桑社) 、共著に「横浜 vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今」(朝日新聞出版)ほか。

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